地域経済経営ネットワーク研究センター年報 = The Annals of Research Center for Economic and Business Networks;第1号

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中国における道内企業と地域労働市場 : 上海市の事例分析

宮本, 謙介

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/48851
KEYWORDS : 新国際分業;地域労働市場;道内企業;戸籍制度;労働格差;日本的経営・生産システム

Abstract

新国際分業に基づくアジア域内経済の相互依存の進展は, 各国・各地域に特有の労働市場を生起させている。小論では中国・上海市に進出した道内企業の事例分析を通して, 中国における地域労働市場の一類型を提示する。調査企業の就業構造をみれば, 正規職の分節的な内部労働市場が形成されつつ,上位の特定職では外部労働市場も併用する。人事考課は能力主義であるが, 長期勤続を評価する賃金構成で正規職の定着も図る。他面, 生産職は短勤続の非正規職への依存が強まり, 派遣工が増大している。それゆえ直接部門では, 内部労働市場の機能も限定的となる。極めて流動性の激しい生産現場にあっては,日本的経営・生産システムの「適応」も後退する。労働力の階層構成では, 上位に地元出身の都市戸籍・正規職, 中位に地元出身の農村戸籍・正規職, 下位に内陸出身の農村戸籍・非正規職という3層の序列化が特徴的であり, 階層間に労働条件や就労安定度で格差が広がっている。上海市がもつ所与の歴史的・社会経済的条件と中国独特の制度要因が接合するとき, そこには特有の地域労働市場が顕現する。アジア各国・各地の地域労働市場の特質把握を積み重ね, アジア労働市場のトータルな構造を把握することが課題となる。

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