經濟學研究 = The economic studies;第62巻第2号

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監査人による法令違反等事実に係る通知申出制度の法的意義

荻野, 昭一

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/51728
KEYWORDS : 監査人;監査証明;金融商品取引法;通知申出制度;資本市場

Abstract

監査人による監査証明は, 企業の作成する財務書類の信頼性を確保し, 健全な資本市場を実現するため, また, 企業を取り巻く多数の利害関係者の適正な経済活動を実現するために極めて重要な制度的インフラに位置づけられる。監査を巡る諸環境は激しい変化の中にあるところ, 本稿は, 平成19年に金融商品取引法の改正によって創設された監査人による法令違反等事実に係る通知申出制度の法的意義について考察したものである。本制度は, 公認会計士監査を充実・強化する観点から, 上場会社等に法令違反等事実が存在する場合に, 監査人が上場会社等との関係において, 強固な地位に基づき適正に監査を行うことができるよう措置されたものと説明される。しかし, 本制度に対する見解は一様ではなく, 制度施行後4年以上経過した今日, 本制度に含有される論点を明確にし, 会社法上の制度との関係について整理した上で, 違反行為に対する制裁や責任の要件を踏まえ, 従来の会社内部の自治を越えて公権力を法的に内包させた制度創設の法的意義について明らかにすることを試みたものである。

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