北海道歯学雑誌;第33巻 第2号

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オステオポンチンは内因性シスプラチン耐性遺伝子で,抗がん剤治療のターゲットとなりうる

柏尾, 啓太

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/52449
KEYWORDS : シスプラチン;オステオポンチン;薬剤耐性

Abstract

【背景】シスプラチン(CDDP)は固形癌の治療に広く使われる最も有力な抗癌剤の1つである.しかしながら,CDDPに対し耐性を示す腫瘍が存在し,術前にその奏効性を予測することは困難である.著者は腫瘍におけるCDDP感受性を術前に予測するために研究を行った.耐性の原因となる遺伝子には,内因性耐性遺伝子と,獲得性耐性遺伝子が知られている.著者の目的の達成には内因性耐性遺伝子の同定が必要となる.ヒト口腔がん細胞株HSC-3よりシングルセルクローニングを行ない,耐性株(HSC-3-6, 8)および感受性株(HSC-3-9, 10)を樹立した.これらの細胞株を用いてマイクロアレイを行い,いくつかの耐性候補遺伝子を見出した.耐性株ではCDDP存在下でもAKTの活性が高かったことから,候補遺伝子のうちAKTの活性に働くと考えられているオステオポンチン(OPN)とCDDP耐性の関係について検討した.【材料と方法】耐性株(HSC-3-8),感受性株(HSC-3-10)におけるCDDP暴露後のAKTの活性をウェスタンブロット法で調べた.次に,OPNを過剰発現あるいはノックダウンした細胞を用い,CDDP処理後の細胞生存率とアポトーシスについて調べた.【結果】耐性株では感受性株に比べ,CDDP暴露後のAKTの活性が高く,AKTの活性を阻害すると耐性が消失した.OPNを過剰発現させたHSC-3細胞はCDDPに抵抗性を示し,逆にOPNをノックダウンしたものでは,抵抗性が減弱した.また,OPNの過剰発現ではCDDPによるアポトーシスが減少した.またSAS細胞でも同様の結果が得られた.【考察および結論】口腔病理病態学教室で樹立した細胞株ではAKTの活性がCDDP耐性に関与していることが示唆された.また,OPNの過剰発現あるいはノックダウンすることでCDDP抵抗性に差を認めたことから,OPNはCDDP投与前のマーカーとなりうること,さらに化学療法における有効性を改善する遺伝子であることが示唆された.

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