研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第14号

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佐藤一齋《石經大學攷》訓注

田海, 秀穗

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/57700

Abstract

江戸時代後期の儒學者佐藤一齋の代表的著作には《言志四録》があり、經學の注釋書としては《小學欄外書》 、《大學欄外書》 、《中庸欄外書》 、《孟子欄外書》 、《傳習録欄外書》 、《易學啓蒙欄外書》 、《論語欄外書》 、《近思録欄外書》 、《周易欄外書》 、《尚書欄外書》が現存する。しかし《言志四録》は一齋の四十代以後に執筆され、各《欄外書》も五十代後半から六十代後半にかけての著作である。一齋の思想全體を捉えるためには、その靑年期を含めた思想的營爲をより幅廣く檢討することが必要である。本稿が訓注を試みた《石經大學攷》は、一齋が寛政二年(一七九〇)の十九歳のときに著した《大學》注釋書である。『石經大學攷』を最初に採り上げた研究として私が注目したものに、中村安宏氏による「佐藤一齋の思想―寛政期をめぐって―」(日本思想史學第二〇號、日本思想史學會、一九八八)と「佐藤一齋―人倫の擔い手の擴大―」(源了圓編《江戸の儒學―『大學』受容の歴史―》所収、思文閣出版、一九八八)の二つの論文が存在する。中村氏の研究目的は、これまであまり明らかにされてこなかった一齋の青年期の思想について、新史料を基に解明しようとすることにあった。私は、前記中村氏の論文から有益な示唆を得て、「佐藤一齋の《石經大學攷》について」を研究題目とする修士論文(本學大學院文學研究科・平成二十五年度)をまとめることができたが、本稿は、もともと右の修士論文用の附録として私が獨自に作成した「佐藤一齋《石經大學攷》譯注」と題する原稿に、大幅な加筆・修正を加えたものである。《石經大學攷》については、これまで校注の類は作成されていない。一齋の思想研究のための資料として活用して頂ければ幸いである。

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