松本書屋本『本草和名』について
武, 倩
Permalink : http://hdl.handle.net/2115/60551
JaLCDOI : 10.14943/rjgsl.15.r51
Abstract
『本草和名』は、九一八年頃に、深根輔仁によって著した薬物辞書である。本書は江戸幕府の医師多紀元簡によって紅葉山
文庫で発見されるまで、長く所在不明であった。元簡は古写本を校訂し、版行したことによって世に広めた。
現在最も多く利用されているテキストは、『日本古典全集』所収の複製本(全集本)である。その底本となるのは、森立之
父子が書き入れをした版本である。
武倩
(二〇一三)「『本草和名』の諸本に関する一考察
―万延元年影写本と全集本との関係を中心に
―」(『訓点語と訓点
資料』一三一)では、台北故宮博物院と無窮会専門図書館神習文庫所蔵の写本(万延元年影写本)を紹介しており、全集本
との関係についても考察を行った。ただし、全集本底本の所在を突き止めることが出来なかった。
その後、森立之父子書入れ本が松本一男氏の所蔵に帰したことが分かり、『松本書屋貴書叢刊』にオールカラーで影
印出版
されていることも明らかになった。
本稿は、この『松本書屋貴書叢刊』所収のカラー版(松本書屋本)を用いて、これまでの書誌研究を見直したものである。
第二章では、蔵書印を手掛かりに、松本書屋本の所蔵経緯を整理する。第三章では、識語・書入れなどを分析し、小島本
との密接な関係を述べる。第四章では、森立之によって行われた校訂をめぐって、詳しく考察する。
これらによって、本研究が今後の研究の手掛かりとなることを期待している。
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