研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第15号

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在日華人教会の布教と課題 : 在日華人クリスチャンセンターの活動を事例に

百古楽

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/60584
JaLCDOI : 10.14943/rjgsl.15.l271

Abstract

本稿は在日華人キリスト教会における宣教的課題を整理したものである。 在日華人キリスト教会は,日本社会における中華系の人々を中心に形成した プロテスタントの教会であるゆえ,在日華人社会の影響を深く受け,またそ れを何らかの形でその教会の中で反映している。在日華人クリスチャンセン ターのような宣教組織は,現地の各教会の協力で,在日華人向けに宣教しよ うと発足した。しかし,それに対して,各教会の態度は大きな差異が生じて いる。それは主に,在日華人教会の中で存在する宗教的アイデンティティよ りエスニック・アイデンティティが優位であることと,教派の対立の問題に よって,教会は相互に閉鎖的になっているからである。 キリスト教では宗教的アイデンティティを最優先すべきだと求めている が,在日華人キリスト教徒の中でその宗教的献身度の差異によって,台湾信 徒と中国大陸出身の信徒の間でエスニック・アイデンティティが優先される 現象が少なからず存在している。一部の在日華人クリスチャンセンターの宣 教活動に積極的に参加している教会は,すべての教会は皆イエスキリストの 教会であるため,宣教という「大儀」の前に協力すべきだと主張しているが, 一部の教会は宣教の重要性を認めるのだけれども,正しいキリスト教の認識 を強調して,多くの教派が集まるそれに参加せず,自らの宣教活動を行って いる。それに対し,教会の一般信者と指導者とは必ず同じ立場に立っている のではなく,一般信者は単純に宣教するのは自分の信仰にとって必要なもの だと思ってそれに積極的に参加するものが多いのであるが,教会の指導者は 正しいキリスト教の教えを重視し,教会の権威を強調することで,一般信者 との間に亀裂が生じる場合も存在している。しかし,それはまた相互の従順 という教義によって緩和されているのである。

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