研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第16号

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熊本藩校「時習館學規」に關する一考察

田海, 秀穗

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/63917
JaLCDOI : 10.14943/rjgsl.16.r65

Abstract

熊本藩校「時習館學規」は、寶暦五年に時習館初代敎授に就任した秋山玉山が起草した時習館の根本規則である。 本稿では、はじめに時習館の施設と人的な概要を概觀した後、時習館の設立を發意した熊本藩第六代藩主細川重賢と重賢の信任を受け、藩校開學に盡力した秋山玉山の敎育觀を檢討した。そこでは若いころから徂徠學派の學風に親しんでいた重賢と玉山が、人材の育成という觀點から個性の伸長を重視する自由で寛容な敎育觀を抱いていたことが確認できた。 次に「時習館學規」の各條文の檢討からは、時習館で行われていた學業課程を定めた條文の中に、一人一人の學生の能力と個性に應じた様々な敎育的配慮を見ることができた。しかしその反面において重賢が寶改革の一環として、新たに制定した「知行世減の法」が、父の勤務成績と子の文武の才能次第では知行を減ずると定めていたために、それがその後の時習館の學風を成績第一主義へと傾斜させる要因となったのではないかと指摘した。 また「時習館學規」の條文と中國明代の總合行政法典である『明會典』の條文との比較檢討から、時習館における學生の 成績や賞罰に關する規則の多くが、『明會典』を參考に作られていたことが確認できた。

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