研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第16号

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大都市における子育て家族の社会的孤立要因 : SSP2015を用いた地域信頼度の分析より

遠山, 景広

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/63924
JaLCDOI : 10.14943/rjgsl.16.l209

Abstract

近代の都市社会は社会で近隣関係の希薄化が指摘されており,要因として都市は多様な人々が集まる場であるために共通する社会規範が持ち難いことや,居住地域での社会関係の維持・形成自体が難しいことがある。これは,中間集団としての地域社会の縮小・弱体化,社会関係を家族や職場などに依存し易い状況である。こうした地縁の希薄化に加え,他人に干渉すること,されることを忌避する私化(金子2011:76)のような,社会関係に対する人々の意識の変化も指摘されている。このような状況下で,子どものいる家庭と地域社会の関係はどのような状態にあるのか。特に都市部では,大日向(1999など)が指摘している「母子カプセル」のように,子どもとその家族が孤立してしまうリスクが危惧される。女性は,血縁や職縁からも離脱し易く,地域との関係も薄いことから母子単位での孤立するリスクが高いと考えられる。そこで,2015年に実施された「第1回階層と社会意識全国調査(SSP2015)」のデータを用い,地域社会との関係を測る指標の1つとして「信頼度」を取り上げ,子どもを持つ家庭と地域社会の関係について,地域信頼度を従属変数として主に重回帰分析による検証を行った。その結果,子どもがいる場合には地域信頼度は高まる傾向にあるが,効果が母親に限定され易いこと,また子どもの年代によって効果が異なることがわかった。特に,未就学児のみがいる段階では地域信頼度が低下する傾向があり,主に質的な研究からの指摘が多かった母親の孤立リスクが,統計的にも確認された。子どもを持つことを躊躇する夫婦が多いことは,こうした孤立のリスクが潜在化していることも要因と考えられる。地域社会を志向する子育て支援を含む社会福祉をみる上では,単に子どものケアを代替するだけではなく,家庭など血縁以外の関係,職場の外での人間関係の構築を支えていくことを考慮する必要がある。

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