北海道大学大学院農学研究院邦文紀要 = Memoirs of the Research Faculty of Agriculture, Hokkaido University;Vol. 34, No. 2

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合併による新農協の経営合理化と組織力強化に関する研究 : JAきたみらいを事例に

河田, 大輔

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/64960
KEYWORDS : 農協

Abstract

本論文は、経営の合理化と組織力の強化を同時的に実現するための農協の組織再編の展開論理について、北海道の先駆的な大規模合併農協であるJAきたみらいを事例として明らかにした。  本研究では、組織力効果を「計画・調整の経済効果」と「参画の経済効果」としてとらえ、それを発揮するための組織力として「農協と組合員との結びつき」に注目し、旧農協時代の組合員と農協との結びつきが、新しい農協との結びつきへ変化する論理について明らかにした。組織力としては、組合員組織をその研究対象とするものがあるが、本研究では農協と組合員との接点である営農・経済事業の事業体制とそこで実際に組合員との接点となる職員に注目をして分析を行った。  新たな農協としての組織力形成の論理については、次のように整理をした。JAきたみらいは経営合理化の取り組みを進めるとともに、組織力強化として激変緩和の措置を取りながら、一定の時期をへて、営農指導体制における組合員ふれあい室の設置や購買事業のセンター化、さらに役員定数(選出基盤の統合)という、旧農協の組織力を払拭する取り組みを行った。支所の廃止という経営の合理化によって生まれた人的資源を営農指導力の高位平準化に振り向けた。出向く営農指導を核とした「新たな農協エリア(3グループ)」での事業を行うことで旧農協のエリア意識を払拭するということを行った。そのためにはより高度な営農指導事業を行う必要がある。ジェネラリストかつスペシャリストという営農指導事業の「高位平準化」を実現することで、あらたな農協への信頼・組織力の強化を図ってきた。それを基盤として「新たな組織力」を形成しながら、JAきたみらいとしての事業展開を行ってきたのである。  意識の変化をベースにしながら、可能なところから「新たな農協」としての事業体制を整備するという論理である。

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