經濟學研究 = The economic studies;第68巻第2号

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ゆうちょ銀行の未来

濱田, 康行

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/72189
KEYWORDS : マイナス金利;信用金庫;信用組合;創業支援

Abstract

郵便貯金制度は日本の財産であった。たしかに,そのあまりの巨大さに批判されたこともあったが,この制度が,日本の貯蓄を進めたことにより日本の資本主義が外国資本への依存を最少に留めて,内生的に発展したことは明らかである。2016年に株式が売り出された。現在の取締役をみると,民間銀行の出身者が社長,旧郵政省から副社長,取締役の多くは社外であるから,民営の体制は整っている。しかし,これが国民的財産であることは変わりない。本稿で問題視したのは,後継組織であるゆうちょ銀行のバランスシート構造である。負債側は,国民の貯金であり,まさに日本人の資産であるのに,貸し方が外国債券に大きく片寄っている。郵便貯金時代は資本運用部から財政投融資,これが廃止されてからは国債中心の運用であった。ゼロ金利・マイナス金利政策の展開で事態は大きく動いた。国内での貸出を,民間金融機関が反対して,ほぼ禁じてしまったために“外に出ていく”ことになった。しかし,この構造はいかにもバランスを欠いている。金利の低下,そして円安の進展しているうちはよいが,相場はいつか反転しリスクは顕在化する。早目の対策が望まれる。

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