研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第18号

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東洋文庫蔵『論語集解』正和四年鈔本の漢字音について

鄭, 門鎬

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/72433
JaLCDOI : 10.14943/rjgsl.18.l11

Abstract

東洋文庫に所蔵されている正和四年『論語集解』は日本において書写された『論語』鈔本のうち最古の完本である。また,清原家の伝写本であり,その中には多くの漢字音注記が施されている。漢字音注記には仮名音注・声点・反切注・同音注の4種類の注記がある。本稿では,各注記の分析を通じて,正和本における漢字音の特徴の詳細を検討する。正和本は,鎌倉末期に書写・加点された。そのため,仮名音注には,その当時の音韻変化を反映させた表記が想定される。それに加えて,呉音や百姓読みの混入例に関しても検討する。声点については,漢音声調である六声体系の保存の度合いや,正和本と『広韻』の体系とを比較し,どれほどの齟齬があるかを調査する。また濁声点における問題について,音韻変化の反映・呉音声調の混入などを交えて分析する。中国側注釈書からもたらされた反切注・同音注については,正和本と現存の通志堂本『経典釈文』との比較を通じて,それぞれの異同の内訳を挙げ,なおかつ被注字として選ばれた字にはどのような特徴があるか,もしくは,それらが正和本の訓点にどのように反映されているかについて考察する。

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