北海道大学演習林試験年報;第6号

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ブナ林の環境と林木の形質との関係

氏家, 雅男

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/72809

Abstract

ブナ (Fagus crenata Blume) は、日本における温帯林の代表的樹種であり、北海道南部長万部から寿都を結ぶ黒松内低地 (北緯42°40') を北限として広く分布している。その立地は、夏がやや冷涼で、冬は比較的温和な多雪地帯であり、また養分に富むブナ落葉は分解が早く、土壌に還元され易いため、肥沃な土壌となり、屡々ブナの一斉林が形成されている。一方典型的な陰樹てあるブナは、幼齢時の生長が遅く、一旦破壊された森林の回復には極めて長年月を要する。しかも生長の衰えた過熟木には、急速に木材腐朽菌が侵入する。一般にブナは、良好な立地に生育している形質のよい青ブナと、高海抜地に生育し、不整樹型で偽心材の多い赤ブナとに区別されている。またブナ林は美しい木目をもち、堅硬・緻密なので、木材乾燥と防腐処理技術の進歩と相まって、現在では合板、洋家具、ドア、フローリング等の用材はもとより、パルプ材としても広く利用されている。その結果この貴重な資源の枯渇が憂慮され、ブナ林施業技術の確立が急がれている。本論文は、北海道南部に生育しているブナ天然林の保続と質的向上をめざし、現地林分に適した施業法を確立することを目的に、林学科森林経理学講座と演習林で共同研究を実施したもの(北大演研報,45,1-59,1988)の一部で、ここでは主として箪者が担当した森林環境とブナの形質との関係についてのべる。

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