北海道大学演習林試験年報;第10号

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森林棲小型野生動物の保護II : 森林の構造と鳥類群衆の関係

中野, 繁;日野, 輝明

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/72986

Abstract

近年の自然保護や森林の公益的機能に対する関心の高まりとともに、野生動物の保護を考慮した森林施業技術の確立が急務の課題となってきている。このような中、プロジェクト研究Dの発足に代表されるように、北大の各地方演習林においても、このような観点に立った試験課題が設定されるようになり、様々な調査、研究が試みられつつある。現在、中川地方演習林では、林内に生息する野生生物のリストの作成を行うと共に、小型哺乳類、鳥類および淡水魚等の保護・管理技術に関する研究を進めており、小型野生動物については試験年報第8号においてその一部である-エゾモモンガの営巣条件とその保護-について述べた。今回はここ数年取り組んできた森林棲鳥類群集の保護のための基礎的研究の成果の一部を報告したい。 森林に生息する鳥類は、昆虫をはじめとする無脊椎動物の主要な捕食者でありかつ種子の重要な分散者であることから、森林生態系の中で果たす役割は大きい。従って今後、森林施業による森林の構造の改変が鳥類群集の多様性に与える影響を最小限にとどめるための指針を明確にしていくことが重要である。森林の構造はそこに生息する鳥類群集の種構成や個体数を決定する大きな要因と成っている。そのため、森林に生息する鳥類の保護を図るためには、その基礎となる森林構造と鳥類群集との関係を定量的に明らかにしていくことが必要である。欧米では古くからこのような研究が数多く行われてきたが、国内では最近になってようやく行われ始めたにすぎない。北海道南部および東部における落葉広葉樹林の森林構造と鳥類群集に関する調査結果はすでに報告されているが、道北地方の森林では未だこのような研究は行われていない。本報告では、中川地方演習林での調査結果を報告しそれらの結果との比較考察を行った。

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