北海道大学演習林試験年報;第11号

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森林観測塔を用いた樹冠研究の展開 : 北海道大学中川地方演習林でのアプローチ

中野, 繁;奥山, 悟;倉本, 恵生;日野, 輝明

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/73172

Abstract

森林は樹木を中心とする多種多様な生物の共生系であり、陸上生物の作り上げる最も複雑で高 次の構造性を持つ特異的な空間である。森林の空問構造は、林床から林冠層に至るそれぞれ異なった特性を持つ一連の階層の集合として捉えることができる。特に、林冠層は光合成による莫大な有機物生産のほとんとを担い、共生系維持の中心的役割を果たしている。しかしながら、地上十 数メー}ルから数十メー}ルの高さの林冠層へのアクセスは容易てはなく、その構造や生態機能、 およびそこに生息する生物の群集構造に関する研究は、近年に至るまで未知の領域であった。こ‘ く最近になって、熱帯林等を中心に集中的な調査が始められたに過ぎない。北海道等の冷温帯に おいても樹冠層における生物現象を解明するための効率的な研究手法の開発が望まれている。 過去、林冠層の情報を得るための手段として、層別刈り取り法等のような樹木自体を伐採ずる破壊的な手法が広く用いられてきた。しかし、近年ては、生物現象を継続的に観察する必要性か ら登はん器具や観測塔等を用いた調査が行われている。ただし、従来の観測塔は林内の空所に建 てられることが多く、林冠内での移動や精細なデータの直接収集に制約があることが多かった。また、単木を取り囲む形で架設された観測塔では、複数個体の比較研究や樹木個体間の相互作用等の調査を行うことが出来なかった。

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