公教育システム研究 = Public education system studies;第18号

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教育と公共性(9) : 市立札幌旭丘高等学校の学校改革と公共性

小出, 達夫

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/75776
KEYWORDS : 高校教育改革;進学優先高校;教育と公共性;個別・普遍・媒介

Abstract

 この論稿は、2000年前後から始まる札幌市立高校の教育改革の実相を通して、教育の公共性の現れをいくつかの高校を事例として取り上げ、検証することを意図したもので、一連の論考の一部である。  前稿の「教育と公共性(7)」では、1997年から 2003年にかけての札幌市教委による改革の取り組みを検証した。この市教委の取り組みにより、各高校が改革に主体的に取り組む条件が作り出された。それは“下からの改革”、“現場からの改革”を意図したものであった。  今回の論考では市立札幌旭丘高校を取り上げ、公共性の空間構造から見た場合、旭丘高校の改革はどのような内容と特質をもつかをみた。ここで言う公共性の空間構造は、この空間が生徒の自己実現を課題とし、個別・普遍・媒介の三極から構成されるという命題を前提としている。個別の極は生徒で構成され、普遍の極は学校の教育目的を意味し、媒介の極はその目的をいかなるシステムによって実現するかという媒介空間を意味する。生徒はこのような空間構造のもとにおかれて、自らの人格の自己実現を追求することになる。そしてこの人格の自己実現こそが三極共通の課題となる。  学校の公共性の質は、その学校に入る生徒がどのような問題を抱え、どのような課題をもつかによって決まる。この傾向は小中学校に比べ、高校では特に際立って現れる。旭丘高校の公共性の空間は、『公教育システム研究』第16号でみた北星余市高校の公共性の空間構造とは異なるし、また同研究誌第18号で見た札幌大通高校のそれとも異なる。このような個別研究を通して教育の公共性に迫ろうとするのが、この一連の論考の課題である。  なお、ここで付記しておきたいことがある。旭丘高校は札幌市内の高校の中でも有数の進学校のひとつであるということである。この点で札幌大通高校とも、北星余市高校とも異なる。その違いは、旭丘高校のほとんどの生徒が大学へ進学しているということである。このことを前提にして、この学校が作り出す独自の公共性について考えてみたい。  なお、現在私が考えている「教育の公共性の空間構造」については、試論として著わした「学校教育と公共性」で取り上げた。これらを合わせて検討されると、私の構想が理解されると思う。

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