北海道歯学雑誌;第41巻 第2号

FONT SIZE:  S M L

オステオポンチンの発現は口腔癌患者のシスプラチンに対する抵抗性の予測因子となりうる

上田, 倫弘

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/80673
KEYWORDS : オステオポンチン;シスプラチン;抗癌剤耐性

Abstract

シスプラチンは頭頸部扁平上皮癌の治療で広く使われる抗癌剤であるが,シスプラチンに耐性を示す癌が存在し,期待した効果を得られない場合も少なくない.その効果を化学療法前に予測することは難しく,その予測が可能であれば抗癌剤による治療の可否を決定できる.化学療法施行前にその効果を予測するためには獲得性耐性遺伝子ではなく内因性耐性遺伝子の同定が必要であり,オステオポンチンはシスプラチンに対する内因性耐性遺伝子の一つとして同定された. オステオポンチンは骨基質中で破骨細胞とハイドロキシアパタイトを架橋するタンパクとして考えられてきた が,多くの正常組織や癌組織でも発現している.オステオポンチンを遺伝子導入した口腔癌細胞株HSC-3細胞で はシスプラチンを作用させると生存シグナルであるAKTのリン酸化の阻害が減弱し,PARPの活性化が阻害された. 口腔扁平上皮癌患者の生検組織でのオステオポンチンmRNA発現量とシスプラチンを用いた化学放射線同時療法の奏効性との関連について,恵佑会札幌病院で化学放射線同時療法を行った37名の口腔扁平上皮癌患者を対象として研究を行った.37名のうち14名は化学放射線同時療法によって癌が完全に消失したが,23名では癌の残存あるいは再発が認められた.化学放射線同時療法前の生検組織からmRNAを抽出し,real-time RT-PCRによりオステオポンチンmRNAの発現量を測定したところ,オステオポンチン低発現群では27例中14例(52 %)で癌が消失したが,高発現群では10例すべてに残存・再発がみられた.原発巣効果期間についてはオステオポンチン高発現群で有意に短かった. これらの結果から,オステオポンチンmRNAの発現量によって術前にシスプラチンを併用した化学放射線同時 療法の効果を予測出来る可能性のあることが,またオステオポンチンはAKTならびにPARPの経路に作用してシ スプラチンに抵抗性を示すことが明らかになった.

FULL TEXT:PDF