北海道大学大学院教育学研究院紀要 = Bulletin of Faculty of Education, Hokkaido University;第117号

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学校統廃合による中学生の生活と意識の変化 ; 北海道旧産炭地A中学校を事例に

浅川, 和幸

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/51014
JaLCDOI : 10.14943/b.edu.117.1
KEYWORDS : 北海道;学校統廃合;中学生;学校生活;意識

Abstract

 公立学校の統廃合は,国や地方自治体の財政削減のために,北海道でも急ピッチで進められている。ところで統廃合を進める際に,財政削減というあからさまな目的だけではなく,統合で学校規模を大きくすることが児童・生徒に良い影響をもたらすという説明も持ち出され ている。この「規模のある学校」論は,保護者から統廃合の同意を調達することに効果を発揮している。しかしながら,統廃合の生徒への影響を検討した研究は極めて少なく,「規模のある学校」論の真偽も確かめられていない。本稿は,統廃合が行われたひとつの中学校を対象として,その後の変化について事例研究を行い,統廃合の影響を検討した。生徒へのアンケート調査の分析の結果から,統廃合は生徒の学校生活における対人関係,特に友人関係を変え,それと学習面の変化が連動していることが明らかになった。特に二つの要因が,この変化に影響していた。第一に,統廃合は,廃校とする規模の小さな学校の生徒を,相対的に大きな規模の生徒社会に投げ込む形になる。前学校/現学校という差異,すなわち「学校経路」要因である。第二に, 女子生徒/男子生徒の差異,すなわち性別要因である。中学時代の微妙な友人関係が,統廃合の評価に大きく影響した。本事例において統廃合の「良い影響」は,部分的で矛盾したものであった。「規模のある学校」論の憶説を,現実的な学校社会のダイナミズムの理解に置き換える必要がある。

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