經濟學研究 = The economic studies;第62巻第2号

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所得はポーランド・リトアニアからEU内部への移民の基幹的動機ではない : 161人の移民者への直接インタビュー調査の結果から

吉野, 悦雄

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/51727
KEYWORDS : 移民;EU;ポーランド;リトアニア;家族

Abstract

著者は2007年から4年間, 両国からEUへの移民者に対して8都市で直接面接調査を行った。調査対象者はリトアニア人が89人, ポーランド人が72人であり, 合計で161人である。面接調査は対象者の母国語で行われ, 調査時間は自由会話を含めて1時間20分程度であった。英語・ポーランド語文献では, 30人以上のEU移民者と直接面接調査を行なった論文は皆無であった。その点で本稿は独自性を有している。まず各都市で, 一名のキー・パーソンを選び, 調査対象者を2名紹介してもらい面接を実施した。さらにその2名が知人を2名紹介してくれ, このような連鎖を通して一都市につき20名前後の調査を実施することができた。分析した相関関係の数は2, 701個あるが, そのうち117個の対立仮説が1%有意水準で棄却された。リトアニア人では「収入」目的の移民比率が, 「世界を見るため」を下回っていた。ポーランド人でも同様であった。録音テープの分析から, 161人のうち47人の移民目的が「家族愛・夫婦愛・親子愛」に分類されるべきものであった。それゆえ, 「所得」が移民の基幹動機ではなく「家族愛」が基幹動機であり, ついで「若者の夢・野心」, 次に「所得」の順であった。

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