研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第21号

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新漢語「発展」の基本語化と類義語「開発」との比較 : 「太陽コーパス」を中心に

畢, 亜莉

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/84009
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.21.l55

Abstract

日本の近代化は,言語にも反映している。近代新漢語「発展」と「開発」はその一例である。「発展」と「開発」は現代日本語の中で,一般的に使用されている。しかし,近代初期に「発展」と「開発」はどのように使用されていたのか。「発展」はどのように基本語化したのか。「発展」と「開発」の使用初期にどのように使い分けられたのか。本稿は明治期の雑誌コーパスを通して,「発展」と「開発」の共起語句の調査により,以下の結果を得た。 (1)「発展」は近代新造語である。使用された初期には,他動詞用法であり,ほとんど自由民権運動に関わる文章に使われていた。1909 年と1917 年には,自動詞用法が増加し,主体となる語句はほとんど「公私」「事業」の分野に集中する。それは日本の殖産興業政策と関わっていると考えられる。 (2)「開発」は,明治初期に,自由民権運動に関わる文章に使われ,その後,自然資源の開発としてよく使われていた。「開発」は明治初期に,「発展」と区別せずに使用されていた。 (3)日本近代化とともに,「発展」は類義語「発生」「生長」「開発」「開展」「舒展」「進め(る)」「発顕」「顕露」「顕す」と競合い,「基本語」となった。「発展」と「開発」の比較により,「開発」は自然資源と共起であるのに対し,「発展」は各産業に関する言葉と共起する。

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