北海道大学大学院教育学研究院紀要 = Bulletin of Faculty of Education, Hokkaido University;第143号

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津軽の荒馬の起源についての一考察 : 江戸期の日記・紀行文の記述に着目して

沼倉, 学

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/91009
JaLCDOI : 10.14943/b.edu.143.1
KEYWORDS : 荒馬;虫送り;ボウノカミ送り;ねぶた祭り;風流行列;Arauma/Arama;Mushiokuri;Bounokamiokuri;Nebuta Festival;marching in parades

Abstract

青森県津軽地方1には荒馬(あらうま・あらま)と呼ばれる民俗芸能が伝承されている。この芸能は馬の形をした衣装を身につけて,馬の動きを表現しながら踊るもので,青森県内に伝わる虫送り,ボウノカミ送り,ねぶた祭りの年中行事の中で,それぞれ異なる様式で踊り継がれている。本稿では荒馬の起源について,江戸期の日記・紀行文といった文献史料に限定した調査を行い,文字資料からの考察を行った。虫送りやボウノカミ送りの行事は1600年代までは虫害や疫病が流行した時に村々で行われ,僧侶による祈祷が見られた。1700年中頃になると,村々で,灯籠を掲げ鉦を鳴らしながら風流行列をする形態が見られるようになった。1700年末頃には,呪術的要素だけでなく,風流行列を楽しむ娯楽的要素が加わった。そして1800年代中期の弘前周辺の地域では,それらの行列の内容を隣の町や村と競い合うようになり,より派手な演出をしようとする中で荒馬が取り入れられた。そして次第に津軽地方全域に広がっていったと推察される。

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