經濟學研究 = The economic studies;第69巻第2号

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政府によるインフラのメンテナンスが経済成長に及ぼす影響

天野, 大輔

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/77768
KEYWORDS : 社会資本蓄積;メンテナンス支出;内生的経済成長;均衡経路の不決定性;弾力的労働供給

Abstract

本研究では連続時間で無限期間にわたって生存する代表的個人モデルを用いて,政府による社会資本(インフラ)のメンテナンス支出が長期的な経済成長率に及ぼす影響を考察した。具体的には,政府による公共投資によって社会資本ストックの蓄積が促進される経済において,私企業の生産技術に社会資本および民間資本の蓄積水準による正の外部効果が発生する場合に,政府の財政政策の変更が均斉成長経路上の長期的成長率および動学システムの局所的安定性にどのような影響を及ぼすかについて理論的に分析した。さらに,Agénor(2013)の世代重複モデルで前提とされた社会資本の資本減耗に関する線形の技術を非線形の関数に拡張した。結果として,政府によるメンテナンス支出によってインフラを長寿命化できる成長経済では,インフラの蓄積水準の弾力性の値に関わらず,競争均衡は移行過程をもつことが示された。さらに,定常状態が鞍点安定的(あるいは完全安定的)である場合には,政府がインフラの新規建設投資を削減してメンテナンス支出を増大させると,成長率が長期的に促進(あるいは減退)されうることが示された。

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