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免震構造物の地震時損傷度評価法に関する研究

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.11501/3083794

Title: 免震構造物の地震時損傷度評価法に関する研究
Other Titles: Seismic Safety Evaluation of Base-Isolated Structures
Authors: 菊地, 優1 Browse this author
Authors(alt): Kikuchi, Masaru1
Issue Date: 29-Sep-1995
Abstract: 免震構造とは、建物の重量を支持しつつ水平方向には柔らかく変形する構造要素を建物基礎部に設置することで建物を地震動から絶縁する構造形式であり、耐震設計の有力な選択肢の一つとして近年注目されている。本論文は、この新しい構造形式である免震構造に着目し、免震構造物の地震時損傷度を評価するための手法を提案しており、全5章より構成される。第1章は「序論」であり、免震構造に関する社会的・技術的背景について述べ、さらに免震構造に関する既往の研究を整理・概観することで、解決すべき課題の抽出を行い、以下に示す3点を研究目的として掲げた。1. 免震装置の復元力特性の把握と復元力モデルの提案 2. 免震構造物の地震時挙動の把握と応答予測法の開発 3. 免震構造物の地震時損傷確率評価法の提案と設計に対する留意点の抽出 第2章「積層ゴムの力学的特性」では、免震構造を具現化する上で最も重要となる免震装置の力学的特性について検討した。本研究では、免震装置として最も一般的に用いられている積層ゴムを対象とした。積層ゴムは、ゴムを薄いシート状にして鋼板と接着させ交互に積層させた構造を有する。初めに、積層ゴムを理想化した数理モデルに置換して、積層ゴムが建築構造物を支持できるような高い鉛直剛性を発揮することを理論的に示した。続いて、積層ゴムの加力実験を行い、様々な条件の下での復元力特性について検討した。実験の対象とした積層ゴムは、高減衰積層ゴムと鉛入り積層ゴムである。これらの積層ゴムは減衰性能を内包し、免震構造を実現する上で別途、減衰装置を必要としない利点を有している。いずれの積層ゴムもせん断ひずみに応じて履歴ループが複雑に変化する性質を有する。そこで、これらの積層ゴムを用いた免震構造物の挙動を把握するために、積層ゴムの復元力特性を統一的に表現できる復元力モデルを提案した。実験結果との比較により、提案した復元力モデルが大変形に至る積層ゴムの荷重変形関係を適確に表現できることを示した。第3章「免震構造物の振動特性」では、免震構造物の振動特性および地震時の挙動について述べた。初めに、免震構造物を2質点振動モデルに置換して基本的な振動特性について考察し、免震構造物の振動特性が上部構造を剛とした1質点振動モデルに近い特性であることを示した。続いて、3階建鉄筋コンクリート造建物を上部構造とする免震構造物の振動台実験を実施して、免震構造物の地震時の挙動を検証した。免震装置には第2章で加力実験を行った積層ゴムを用い、設計で想定する地震動レベル(1次,2次設計レベル)から極大地震動レベルまでの加振を行った。設計レベルの加振では、積層ゴムの種類を問わず、上部構造の応答加速度の低減効果が得られた。現行の耐震設計基準に則って設計を行った建物を免震構造とした場合には、2次設計レベルにおいても上部構造は弾性状態を維持できるような地震力の低減効果が確認された。極大地震動レベルの加振では、上部構造に著しい損傷が生じたが、積層ゴムには損傷は認められなかった。エネルギー応答に基づいた免震構造物の応答予測法に関する検討では、総入力エネルギー、最大瞬間入力エネルギー、最大瞬間損傷エネルギーの3種類のエネルギー量と免震装置の最大変形の相関性について検討し、最大瞬間損傷エネルギーが最も高い相関性があることを示した。最後に、第2章で提案した積層ゴムの復元力モデルを用いて、振動台実験結果の再現を試みた。最大応答値の比較では、解析結果は実験結果に対して25%程度の差であった。免震装置の荷重変形関係に関しては、実験に用いたすべての積層ゴムの荷重変形関係を良好に表現し、床応答スペクトルの比較によって応答の周期特性についても実験結果を良好に再現できた。上部構造の非線形挙動については、各層の招せん断力と層間変形の関係について実験結果と良い対応が得られ、部材の損傷の程度についても実験結果と同様の損傷状況となった。地震応答解析結果と振動台実験結果とに良い対応が得られたことで、本研究で提案した積層ゴムの復元力モデルの動力学的適用性についても妥当性を示した。第4章「免震構造物の地震時損傷確率」では、地震に対する免震構造物の上部構造の損傷度を確率論的手法を用いて評価した。地震時損傷確率を詳細に検討することで、免震構造物の地震時損傷度に関する一般的な傾向を探り、免震構造物の設計に対する留意点について指摘した。初めに、建築構造物の地震時損傷確率の評価に関する既往の研究について検討を行い、本研究で用いるべき損傷確率の評価手法ならびに確率モデルの策定を行った。地震動の不確定性に関する情報の欠如や免震構造物の非線形の応答特性等を考慮した各種の予備検討結果より、地震動を確定的に与え多数のサンプルを効率的に 発生させて地震応答解析を試行することで損傷確率を評価する方法を構築した。この方法には、免震構造物の非線形応答特性を上部構造の損傷確率に直接的に反映できる利点がある。免震構造物を規定する各パラメーターに関する感度解析では、上部構造の損傷には上部構造の降伏耐力のばらつきが最も大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。そこで、上部構造の降伏耐力のみにばらつきを与え、免震構造としての周期を2.0-4.0秒の範囲で設定して、上部構造の降伏耐力をパラメーターとした損傷度曲線を算定した。免震構造と基礎固定である在来構造の損傷度曲線を比較した結果、上部構造の損傷確率は免震構造の方が圧倒的に低減されるとともに、免震構造の方が降伏耐力の変化に対して敏感に損傷確率が変化することが明らかとなった。続いて、一定超過確率の下で上部構造の許容塑性率と必要降伏耐力の関係を求めた。在来構造では許容塑性率を増やすことで、必要降伏耐力が急激に減少するという結果が得られた。これは在来構造では構造物の塑性化に伴い履歴エネルギー吸収が期待できることによる。一方、免震構造では許容塑性率を増加させたとしても、在来構造ほど必要降伏耐力は低減されない。この原因について究明するために、1質点振動系の弾塑性定常応答について考察した。免震構造物の上部構造には、免震装置というフィルターを介して、免震構造の周期にほぼ対応した周期の地震力が作用すると見なせる。このような周期領域で作用する地震力に対しては、慣性力や減衰力による動的な抵抗が小さいことから、上部構造が降伏耐力に達すると急激に上部構造の塑性変形が進行することになる。したがって、免震構造を採用する場合の上部構造の設計では、降伏後の靭性の確保よりも弾性状態を維持することが重要であると結論づけた。第5章「結論」では、本論文の結論を述べるとともに、今後の課題と展望について言及した。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 乙第4829号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 工学
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/51290
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Submitter: 菊地 優

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