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農村地域における窒素フローに関する研究 : 理想的な窒素循環を維持する有機物管理を中心にして

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.11501/3137278

Title: 農村地域における窒素フローに関する研究 : 理想的な窒素循環を維持する有機物管理を中心にして
Authors: 松本, 成夫 Browse this author
Issue Date: 25-Mar-1998
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 作物生産のため,農地には多量の肥料が施用されており,そのため,地下水などの環境が汚染されている.そこで,農地への施肥量の低減が求められている.一方,家畜糞尿やし尿・生ゴミなどの廃棄物が多量に排出されており,これらを堆厩肥に加工し,農地に施用することが勧められている.この様な相異なる要求に対しては,これらを一体的にひとつのシステムとして把握することが必要である.そのため,「農地」,「家畜」,「人」が活動する農村地域を対象とし,そこにおいて,養分の重要な要素である窒素がどれだけ循環利用されているのか,廃棄や農地からの流出によりどれだけ環境に負荷を与えているのかを明らかにし,農村地域における窒素フローを解明することを本研究の目的とする.農村地域における窒素フローを明らかにするため,モデルの構築を行った.まず,「農地」-「食料・飼料」-「人・家畜」-「糞尿」-「農地」の循環系を基本とした.この循環系に窒素が出入りする経路を加え,モデルを構築した.出入りする経路は,農作物の出荷および食料・飼料の購入経路,糞尿や作物残渣が廃棄および販売される経路,そして,化学肥料や溶脱など農地における窒素の流入・流出経路である.農村地域における窒素フローの見積もりは3つの部分で行った.まず,農作物主産物および副産物による吸収窒素量を求める.これは農林水産統計年報を用い,作物ごとの収量のデータに各作物の窒素含有率を掛けて求める.副産物の生産量は主産物に対する副産物の部位の重量比から求めた.次に,人・家畜に供給される食料・飼料の窒素量および排出される糞尿の窒素量,そして,その糞尿の利用量を求める.食料・飼料の消費量は農家生計費統計および畜産物生産費統計から求め,それに窒素含有率を掛けて食料・飼料に伴う窒素供給量を求める.糞尿,生ゴミの排出量は研究データを用いて求めた. 糞尿,生ゴミおよび農作物副産物の農地への利用状況は畜産統計および調査資料を用いて求めた.最後に,農地における窒素収支を求める.農地への窒素供給経路には,化学肥料,堆厩肥,降雨,灌慨および窒素固定がある.農地からの流出経路には、作物吸収,脱窒,溶脱および蓄積がある.化学肥料による窒素供給量は施用基準より,堆厩肥による窒素供給量は農林水産省が行ったアンケートデータをもとに,その他の経路は既存の研究成果をもとに,農地に出入りする窒素量を求めた.溶脱および蓄積となる窒素量は農地におけるインプット総量からアウトプット総量を引いた量であり,収支として余った窒素が溶脱もしくは蓄積するものとして見積もった.本研究では,具体的に,茨城県内の3つの農村地域;牛久沼集水域(平地農村地域),取手市(都市地域),里美村(山地畜産地域)を対象に,それぞれの地域における窒素フローを求め,その評価を行った.平地農村地域である牛久沼集水域では,農地に投入可能な有機物資源;農作物副産物,家畜糞尿,し尿・生ゴミの総量が農地面積当たり142kgNha-1yr-1であり,そのうちの66kgNha-1yr-1が廃棄されていた.農地から溶脱・蓄積する窒素量は72kgNha-4yr-1であった.農地には化学肥料により109kgNha-1yr-1の窒素が供給されており,それが溶脱・蓄積窒素量を高めていた.家畜糞尿は農地投入されていたが,し尿・生ゴミは90%が廃棄されていた.このし尿・生ゴミを農地還元利用するには,化学肥料の施用量を低減するだけでなく,作物生産を増やし,窒素の吸収量を高める必要があると予測された.都市地域である取手市は人口が多く,そのため,300kgNha-1yr-1を越す食料が地域外から供給され,し尿・生ゴミとなって廃棄されていた.それに対し,有機物資源の農地還元量は65kgNha-1yr-1と少ない.廃棄されている窒素を取手市内の農地で受け入れることは不可能である予測された。し尿・生ゴミの源は食料であり,取手市外から供給されたものである.廃棄窒素量を減らすためには,し尿・生ゴミを取手市外に持ち出すことが必要であると予測された.里美村は山地畜産地域であり,農地が狭く,牛の飼育頭数が多い.そのため,およそ100kgNha-1yr-1の飼料が地域外から購入されている.家畜糞尿の61%は里美村の農地に施用されているが、化学肥料と合わせて約160kgNha-1yr-1の窒素投入量となり、従って、農地から溶脱する窒素量は10gkgNha-1yr-1にも達していた.里美村では,狭い農地に多量の家畜糞尿が投入されることにより,農地からの窒素溶脱量が多くなることが認められた.里美村では,地域外に家畜糞尿を搬出しているが,この搬出量を増やすことにより,里美村の農地への投入量を減らすことができると予測された.窒素を循環利用することにより,廃棄および溶脱による環境汚染を低減できると考えられる.そのためには,農地から窒素を吸収した作物の地域外への搬出もしくは糞尿の地域外への搬出を行い,複数の地域で窒素を循環させることが必要である.しかし,現在の日本では,生産された作物や糞尿などを受け入れることができる地域はないものと思われる。環境を汚染しない窒素循環を実現するためには,農地を確保し,そこで食料・飼料を生産し,また,糞尿を受け入れるシステムの確立が必要であると考える.
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 乙第5315号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 農学
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/51493
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Submitter: 松本 成夫

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