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公的集合住宅の室内気候の実態と地域性に基づいた温熱環境計画に関する研究

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.11501/3159832

Title: 公的集合住宅の室内気候の実態と地域性に基づいた温熱環境計画に関する研究
Authors: 坊垣, 和明 Browse this author
Issue Date: 30-Sep-1999
Abstract: 快適性を維持しつつ省エネルギーや二酸化炭素の排出抑制を推進しなければならない地球環境時代にあって、集合住宅もまたどの様な温熱環境形成がリーズナブルか、そのためにはどの様に計画し、建設していかなければならないのか、が問われている。本研究は、昭和40年代以降の公営集合住宅を中心とした4回にわたる全国規模での室内温熱環境、エネルギー消費量、生活状態・暖冷房意識などに関する調査を通して、室内気候やエネルギー消費量の実態とその変遷や地域特性を明らかにし、地域差や変化をもたらした要因を解明すると共にそれらの知見に基づいて、今後の我が国の住宅、特に公的な住宅供給の側面の強い集合住宅の「温熱環境計画」のコンセプトを提示することを目的としている。本論文の骨子となる4回の調査は、昭和40年代の初めを第1回として、約10年の間隔で、全国の主要都市の公営集合住宅を主な対象として実施したものである。本論文では、第1章で研究の目的と背景を述べ、第2章で、我が国における集合住宅の成り立ちと普及の過程をまとめ、公的集合住宅の位置づけと主として戦後の住宅供給の面で果たしてきた役割を明らかにした。次いで、第3章で4回の調査の目的と調査方法を示し、第4章から第7章まで各章毎に4回の調査結果をまとめた。第I期の調査(昭和40年代初めの調査、第4章)は、敗戦後20年を経過しながら依然として住宅の量的な充足が最優先であった時期に、建築研究所が開発し、全国的に建設された薄肉コンクリートプレハブ型住宅を主対象に行われている。この種の住宅は、明け方の室温低下が大きいなど現在の熱的な性能水準からは見劣りするものの、当時の一般的な木造住宅に比べ室内温熱環境は向上しており、居住者の評価からも居住水準の底上げに一定の役割を果たしたことを明らかにした。また、この当時において既に北海道では、明らかに他の地域よりも高い室温で生活していたことなども分かった。第II期の調査(昭和50年代初めの調査、第5章)は、第1次オイルショック後の省エネルギーに極めて関心が高まった時代に行なわれている。断熱性能の向上に伴い、室温が上昇する傾向を確認し、北海道以外の地域では地域内で暖かく住んでいる住戸とそうでない住戸の差が大きく、室温形成には建物の断熱性能も関係するが、住まい方の影響の方が大きいことを明らかにした。一方、北海道では住まい方や暖房方式よりも建物の保温性に影響される傾向が強いことを示した。第III期の調査(昭和60年代初めの調査、第6章)は、長らく続いたオイルショックの影響を脱して、より快適な環境が求められた時代に行なわれている。この時期には、画一的な標準設計の普及で地域性を喪失してしまった公営住宅のあり方が問われ、建築計画の面から地域性への再挑戦が数多く試みられた。全体としてより断熱化が進み、室温は上昇を続け、暖房室内の上下温度分布は小さくなり、熱的な居住性が改善されていることなどを明らかにした。しかしその一方で、建築計画の観点から高く評価された公営住宅の地域性回復への試みは、熱環境計画への配慮の欠如から結露が多発するなど、居住水準の面では大きな課題を残していることも示した。第IV期調査(平成4から5年の調査、第7章)は、地球規模の環境問題に焦点を当て、環境意識とエネルギー消費量および室温の実態把握を目的とした。居住者の環境意識の高さと実際の行動(エネルギー消費節減など)が必ずしも一致しないことや、住宅のエネルギー消費は暖房よりも給湯の方が多く、この面での省エネルギー対策の必要性が高いことなどを明らかにした。また、北海道とそれ以外の地域では依然として5℃近い旧平均室温の差があることを示した。以上の調査結果に基づいて、第8章と第9章では、室温とエネルギー消費を分析した。第8章では室温の変遷とその地域性を検討し、同平均室温は、札幌では22℃前後の概ね変らない水準で推移してきているが、その他の地域では徐々に上昇し、第IV期の東北地方では、20℃近い室温に達していることを示した。それ以外の地域でも、17-18℃前後であり、暖房時には20℃を超える住宅も多い。その反面、ほとんど「こたつ」のみで過ごす「住まい方」も健在であって、多様な住まい方が同一地域内に混在することを明らかにした。このことからは、地域差よりも住戸差への配慮がより重要であると指摘できるが、東北を含め、この生な多様な住まい方に相応しい住宅の熱環境計画の必要性が高いことを明らかにした。第9章ではエネルギー消費の変遷を検討し、調査対象住宅群におけるエネルギー消費量は、20年あまりの間ほとんど増加せず、暖冷房用はむしろ減少していることがわかった。このことは、この期間の住宅面積の拡大や室温上昇などの増加要因を相殺する程度まで、公営集合住宅の断熱性・気密性が向上したことを示すものである。一方、第IV期の対象住戸でも、断熱性の水準が高くない事例もあり、今後も一層の断熱化によって、暖冷房用エネルギー消費の増加を抑制できる可能性が高いことを明らかにした。第10章ではライフスタイルについて言及し、暖冷房期間・暖冷房パターンとその地域特性を明らかにするとともに、こたつなどの補助暖房器具の効果や着衣の影響を検討し、これらが室温の多様性を生み出す要因となっていること、室温が多様であるにもかかわらず居住者の反応がほぼ一様におおむね快適であるという興味深い申告もこれらのライフスタイルに係わる要因の効果に裏付けられることを示した。また、行政や環境工学の果たしてきた役割と課題について、第6章でも地方の公営住宅における熱環境計画の欠如の実態を指摘したが、環境性能の向上が中央の行政施策の主導によるもので地域の伝統技術や気候風土などの特性が反映されていないことや昭和60年代に至っても結露が頻発する実態を示し、公営住宅の計画に環境工学的知見が活かされてこなかったことを明らかにした。第11章では、快適性と住まい方に触れ、快適の技術化の限界を示すとともに、地球環境時代の快適性を論じ、精神的快適観の重要性を示した。第12章では、これからの住まいづくりに言及し、中央および地方の行政現場ならびに環境工学が果たすべき役割として次の様な提言をまとめた。これからの公営住宅の計画には、地域の住まい方や気候特性を活かした環境計画の導入が必要であり、それを進めるためには、環境工学的な知見の蓄積と普及が不可欠になる。即ち、それぞれの地域に地域性を理解し、それを具体化できる人材と、それを受入れ支援し、推進していく体制が整えられる必要がある。住宅行政は居住者の視点で取り組むとともに地方主導で行われるべきであり、環境工学の教育は共通的な一般原則を伝えるにとどまらず、地域の特性やそれを活かす技術と考え方が教授されなければならない。また、環境工学の研究も地域住民に近い視点で行われる必要があり、その成果をより積極的に地域に還元する努力が求められる。本論文では、行政の一端に属し、施策への反映を意図しながら折々に実施した調査を通して、昭和40年代以降の公営住宅に対する社会的・行政的・研究的課題や対応策、並びにその効果を明らかにして、その結果に基づき、これからの公営集合住宅づくりに応える提言をまとめている。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 乙第5537号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 工学
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/51624
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Submitter: 坊垣 和明

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