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Proteomics on environmental response of Pseudomonas putida F1 in soil

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.r6908
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Title: Proteomics on environmental response of Pseudomonas putida F1 in soil
Other Titles: 土壌におけるPseudomonas putida F1の環境応答に関するプロテオーム解析
Authors: 森本, 一1 Browse this author
Authors(alt): Morimoto, Hajime1
Issue Date: 25-Mar-2014
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 微生物は地球上のあらゆる環境に生存している。近年では、メタプロテオミクスにより、環境における微生物群集の遺伝子発現レベルにおける機能解析が行われてきているが、現状のメタプロテオミクスにおいて、複雑な複合系の中で特定個体の個生態を理解することは困難である。また、土壌環境で微生物がどのような遺伝子を発現し生存しているのかを研究した例は極めて少ない。本論文では、土壌環境における特定の微生物に着目し、土壌内における環境応答をプロテオーム解析で解析した。第2章では、液体培地で培養した土壌細菌Pseudomonas putida F1 株の芳香族炭化水素分解に関与するタンパク質群をプロテオーム解析により明らかにした。第3章では、土壌内におけるP. putida F1 株の芳香族炭化水素の添加に対する応答を解析した。土壌内におけるP. putida F1 株の芳香族分解関連タンパク質発現を全て検出できたことを踏まえ、第4章では複雑な土壌環境に対するP. putida F1株の環境応答として土壌環境でのみ特異的に発現する遺伝子の解析に着目した。P. putida F1 株は芳香族炭化水素(トルエン、エチルベンゼン、ベンゼン)をTCA サイクルの中間代謝物に分解できることが知られている。トルエン、エチルベンゼン、ベンゼンの分解に関与するタンパク質を決定するために、これら芳香族炭化水素を唯一の炭素源として添加した液体培地で培養したP. putida F1 株からの細胞内タンパク質は、1-DSDS-PAGE とLC-MS/MS を用いて同定した。本論文では、ラベルフリーなemPAI に基づいた半定量的なプロテオーム解析アプローチを用いた。各種培養系からタンパク質セットを比較解析した結果、P. putida F1 株のトルエン、エチルベンゼン、ベンゼンの分解に関与するToluene degradation (Tod) pathway、エチルベンゼンの分解に関与する2-methylcitrate (2-MC) cycle およびベンゼンの分解に関与するβ-ketoadipate pathway に関与する全ての主要タンパク質を同定した。さらに、tod オペロンの発現を制御する二成分制御系 (TodST) やtod オペロンの下流に位置するsolvent effux pumps (SepRABC) についても同定した。これらの結果から、P. putida F1 株の液体培養におけるプロテオーム解析で半定量法による解析法を確立し、芳香族炭化水素分解に関与する遺伝子を明らかにした。実際の土壌環境におけるP. putida F1 株の芳香族炭化水素に対する応答を解析し、実験室内で得られた知見が実際の環境において反映されているのかを明らかにすることを試みた。土壌環境中におけるP. putida F1 株の芳香族炭化水素分解関与タンパク質の発現変化を解析するため、グルコースを添加した園芸用土壌にP. putida F1 株を接種し3日間の培養を行った後、その培養土壌に芳香族炭化水素(トルエン、エチルベンゼン、ベンゼン)をそれぞれ添加し、培養を継続した。土壌培養したP. putida F1 株からのタンパク質抽出は、密度勾配遠心分離法を用いて土壌から細胞を分画した後、その細胞分画を用いて行った。抽出タンパク質は、二次元電気泳動法 (2-DE) および一次元電気泳動法 (1-D SDS-PAGE) による分離後、質量分析計 (nanoLC-MS/MS) および Mascot 検索を用いてタンパク質の同定を行った。2-DE/LC-MS/MS 解析は、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼンを添加した土壌で培養したP. putida F1 株から、それら芳香族炭化水素の分解に主要な22タンパク質のうち、12のタンパク質を検出できた。エチルベンゼンを添加した土壌の1-D SDS-PAGE/LC-MS/MS解析では、約1260 のP. putida F1 株タンパク質を同定した。エチルベンゼン分解に関与する全て主要タンパク質、トランスポーターおよびセンサータンパク質は、液体培養と同様に高発現した。これらの結果から、P. putida F1 株の土壌環境中における芳香族炭化水素の分解様式は、実験室内で得られた結果と同様であることを示した。従って、P. putida F1 株の芳香族化合物の分解は、実験室内で得られた知見を実際の環境で反映していることを明らかにした。本解析アプローチは、土壌内でのP. putida F1 株の環境変化に対する応答をタンパク質レベルで解析できたことから、土壌に生息する微生物の理解に貢献できる可能性を示した。未だ細菌ゲノム解析株において多くの機能未知遺伝子が存在する。これらの機能未知遺伝子の中には、細菌が生来生息する環境でのみ発現・機能する遺伝子が存在すると考えられた。本研究では、P. putida F1 株の土壌培養系と液体培養系に対して、比較プロテオーム解析を行い、土壌環境特異的な発現タンパク質の検出および解析を行った。P. putida F1株は、0.5%グルコースを添加した土壌(大豆畑、コーン畑、森林)に接種し、3 日間、30℃で培養した。土壌培養したP. putida F1 株からのタンパク質抽出は、密度勾配遠心分離法とSDS-フェノール法を用いて行った。抽出タンパク質は1-D SDS-PAGE 後、質量分析計およびMascot 検索を用いて同定した。プロテオーム解析により、大豆土壌、野菜土壌および森林土壌において、それぞれ1364、1273、816 タンパク質を同定した。比較プロテオーム解析において、土壌特異的に発現する2 つの遺伝子および1 オペロンを特定した。それら遺伝子は、一酸化窒素ジオキシゲナーゼおよび機能未知遺伝子を含んだ。一方のオペロンは、二成分制御遺伝子を含む7 つの遺伝子で構成された機能未知のオペロンであった。また、土壌特異的オペロンの発現因子について、多種微生物間相互作用の生物学的側面や土壌の物理的・化学的側面から検討を行った結果、土壌成分がその発現に関与していることが推測された。さらに、この土壌特異的オペロンについて系統解析を行った結果、主にプロテオバクテリア門に保存されている遺伝子群であることが示された。本論文において、土壌内でP. putida F1 株の芳香族炭化水素に対する応答をタンパク質レベルで検出することができ、液体培養と比較において同様の主要分解タンパク質を発現することを示した。また、土壌という環境要因によるP. putida F1 株の土壌特異的発現タンパク質を特定することができた。本研究手法より、土壌に生息する細菌の発現タンパク質を詳細に解析することができ、試験管内での生理状態とは異なった現場での生理学的・遺伝学的な環境応答を理解することが可能となった。本研究手法を他の微生物種に応用することで、対象とする微生物のそれぞれの生息環境における個生態学やライフスタイルの理解を深めることが期待される。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 乙第6908号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 環境科学
Examination Committee Members: (主査) 准教授 笠原 康裕, 教授 福井 学, 教授 森川 正章, 教授 岡部 聡 (大学院工学研究院)
Degree Affiliation: 環境科学院
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/55578
Appears in Collections:学位論文 (Theses) > 博士 (環境科学)
論文博士 (Doctorate by way of Dissertation) > 環境科学院(Graduate School of Environmental Science)

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