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粘土鉱物担持メタロセン触媒の活性点解析およびポリプロピレン重合への応用

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k12797
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Title: 粘土鉱物担持メタロセン触媒の活性点解析およびポリプロピレン重合への応用
Other Titles: Active Sites Analysis and Application to Propylene Polymerization of Clay-mineral Supported Metallocene Catalysts
Authors: 田谷野, 孝夫 Browse this author
Issue Date: 23-Mar-2017
Publisher: Hokkaido University
Abstract: オレフィン重合用メタロセン触媒には、メチルアルモキサン(MAO)が主に活性化剤として使用されるが、これは、分子構造が非常に複雑であること、化合物として不安定であることなどに起因して、活性化機構や担持触媒としての振る舞いが十分には解析されていなかった。しかし、重合活性などの触媒性能を高めるためには、活性化機構や触媒機能を解析し最適な触媒を開発する必要がある。そこで、プロピレン重合用メタロセン触媒として、粘土鉱物(酸処理モンモリロナイト(酸処理MMT))にメタロセン錯体を担持した触媒を開発した。この触媒は、粘土鉱物に担体(Support)と活性化剤(Activator)の二つの役割を演じさせた“Support-Activator(S-A)”という新しい発想の活性化剤を具現化した最初の触媒である。本学位論文は、粘土鉱物担持メタロセン触媒の活性点解析およびポリプロピレン重合への工業的実用化に関するもので3章から構成される。1章は、ポリプロピレン重合用メタロセン触媒の背景について述べた。2章は、2−1.粘土鉱物“S-A”のメタロセン錯体活性化機構、2−2.粘土鉱物(酸処理MMT)“S-A”の活性点の解析、2−3.固体触媒上でのメタロセン錯体活性種(カチオン化)の検出法の確立について述べた。3章では、本触媒をポリプロピレン製造に応用するために、3−1.不均一系重合プロセスのための粘土鉱物(MMT)の造粒法の開発、3−2.高重合活性粘土鉱物(酸処理MMT)“S-A”担持メタロセン触媒のための担持技術の開発について述べた。 2−1.粘土鉱物“S-A”のメタロセン錯体活性化機構 従来、粘土鉱物“S-A”がメタロセン錯体を活性化する要因は、①粘土上で形成されたMAO-like成分、②粘土表面の水酸基とアルミニウム化合物の反応物、③粘土鉱物上の酸点の3つの考え方があり、結論は得られていなかった。本章では、粘土鉱物の酸処理と重合活性の検討、および種々の解析的検討を厳格な水分管理のもとに行い、粘土鉱物がメタロセン錯体を活性化させる真の要因は粘土鉱物上の強酸点(pKa<-8.2)であり、この強酸点は酸処理によって形態の変化した粘土粒子端面の微少細孔(Dp<6nm)内に位置することを見出した。 2−2.粘土鉱物(酸処理MMT)“S-A”の活性点の解析 活性点の位置に関して、Weissらは、酸処理されたMMTの検討で、酸処理によりアモルファス化したシラノール部分が活性点に関与すると類推し、Kurokawaらはマイカを用いた検討で、マグネシウム塩で処理されたマイカの層間に活性点は存在すると報告している。本章では、原料粘土、酸処理粘土の薄膜の解析をSTEM-EDS、AFM、計算シミュレーション、さらには、塩基滴定によって行い、粘土鉱物の酸処理は粘土薄膜の端面から金属イオンの溶出という形で進行し、端面付近のみで形態や化学的変化が起こることを確認した。また、XRDによる各種粘土処理剤の層間へのインターカレーションの検討や微量のPPを重合させた触媒の顕微鏡観察結果から、この触媒(酸処理MMT)の活性点は強酸点によって活性化されたメタロセン錯体であり、活性点は粘土の層間ではなく粘土粒子の端面にあることを検証した。 2−3.固体触媒上でのメタロセン錯体活性種(カチオン化)の検出法の確立 高活性触媒製造のためには活性化メカニズムを知ることが重要であるが、固体触媒上での活性種の検出は、活性点の数が少ないことと、分解能・検出感度が低い事により困難であった。本章では、活性種の検出方法を検討した。粘土鉱物上で進行するメタロセン錯体の活性化反応の解析には、固体でも比較的高い感度で分析ができるUV-vis吸収スペクトルを用いることが有効であることを示した。使用したメタロセン錯体の吸収スペクトルを予め理論計算により予測し、溶液状態で確認し、これらの結果を基に、固体触媒上の各種化学種を帰属する方法を確立した。これにより、固体触媒上でも十分に活性化反応(カチオン種形成)を観察できる手法を得た。これらの解析結果は、粘土鉱物担持触媒の理解を大きく進め、高性能のPP重合用触媒を得ることに大きく寄与した。 3−1.不均一系重合プロセスのための粘土鉱物(MMT)の造粒法の開発 “S-A”による高重合活性固体触媒の実用化には、造粒技術による担体性能の付与は必須の技術課題であった。2章でメタロセン錯体の活性化に極めて重要な強酸点の獲得に有利な粘土鉱物と分かったMMTを選択した。しかし、MMTはその水スラリーの粘度が高く、スプレードライ(SD)法による造粒の難しい粘土鉱物であった。多くの検討の結果、原料MMTの粉砕とSDを組合せた粉砕造粒法が水スラリーの粘度低減に役立ち、球形で、適度な強度を持ち、粒子の大きさも容易に制御できることを見出した。本手法により、MMTがオレフィン重合用触媒の担体として使用可能である事を実証した。 3−2.高重合活性粘土鉱物“S-A”担持メタロセン触媒のための担持技術の開発 酸処理で活性化剤の能力を持ち、SD造粒で担体としての機能をもった酸処理MMT“S-A”にメタロセン錯体を担持・触媒化する際の検討を行った。酸処理MMT“S-A”は合成段階で含水条件での処理により、また特異な層状構造を持つため多くの水を含有する。しかしながら、オレフィン重合触媒にとって水は触媒毒となるため、この水を除去・無害化することが重要な課題であった。本章では、乾燥と有機金属処理を用いる事で水の無害化法を確立した。 また、高性能なメタロセン担持触媒を得るためには、メタロセン錯体の活性化の観点から、アルキルアルミニウムの使い方がポイントであることも確認した。2−3章で確立したUV-vis吸収スペクトル法を利用し、担持時に使用する処理剤(アルキルアルミニウム、プロピレン)の活性化に対する影響をカチオン種の観点から再確認し、これら処理剤の使用法を工夫して高性能触媒の創製を実現した。 以上、五つの課題を検討し、その結果を粘土鉱物“S-A”技術に適用することにより、本触媒は工業的に使用できる触媒性能と製造コストを得ることに成功した。また、本学位論文とは別に研究したPP重合用メタロセン錯体の開発から得られた知見を基に、分子量、立体規則性、位置規則性、共重合性等が改良された粘土鉱物“S-A”担持高性能PP重合用メタロセン触媒を合成した。さらに、本担持触媒に重合技術を組合せて、従来にはない低融点プロピレン-エチレンランダム共重合体(WINTECTM)、柔軟性リアクターTPO(WELNEXTM)、高溶融張力PP(WAYMAXTM)の3種PPの開発に成功した。また、PP重合用担持メタロセン触媒の大きな欠点であった生成ポリマーの融点低下の改良にも取り組み、ほぼ克服の目途を得た。今後、メタロセン触媒がPP本来の高剛性、高耐熱の分野にも使用できる可能性も確認できた。 以上、本学位論文では、粘土鉱物担持メタロセン触媒の活性点解析を行い、粘土鉱物“S-A”がメタロセン錯体を活性化するサイトが強酸点であること、また、その強酸点は粘土薄膜の端面に位置し、これが活性点となることを明らかにした。また、これらの解析結果と粘土鉱物の造粒技術とを組合せて触媒の実用性能の改良を行い、工業的に使用できるPP重合用メタロセン担持触媒の開発を達成した。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第12797号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 工学
Examination Committee Members: (主査) 教授 大熊 毅, 特任准教授 山本 靖典, 教授 中野 環, 教授 佐藤 敏文, 教授 佐藤 努
Degree Affiliation: 総合化学院(総合化学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/65384
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 総合化学院(Graduate School of Chemical Sciences and Engineering)
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