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主催:北海道大学大学院文学研究科応用倫理研究教育センター 本冊子は2016 年12 月18 日に北海道大学において開催されたフォーラム「シティズンシップと市民運動~ LGBT をとりまく日本的事情~」の発表と議論の記録です。 本フォーラムは、性的少数者(LGBT)の社会・公的認知の拡充に対して、「シティズンシップ」と「市民運動」はどのような貢献を果たしうるかについて検証・展望することを意図して実施されたものです。「シティズンシップ」には「市民としての身分」、「市民性」、「市民権」といった訳語が当てられています。しかしLGBT の人々にとって「シティズンシップ」とは具体的に何を意味するのでしょうか。あるいは「市民運動」とは何を意味するのでしょうか。2015年にはSEALDs(「自由と民主主義のための学生緊急行動」)が国会議事堂前で特定秘密保護法に反対する集会を開き、SEALDs が中心となったデモには多くの若者が参加しました。また、“子どもの未来を守りたい”との考えから脱原発や戦争反対、特定秘密保護法廃止などを訴える「ママデモ」などと呼ばれる活動も注目を集めました。最近では、大統領選挙後の米国で様々な市民運動が展開されており、隣の韓国でも大統領の罷免を求めて市民による百万人規模の抗議集会が開かれました。はたしてこのような「シティズンシップ」や「市民運動」によって、日本でもLGBT をめぐる運動にも新しい風が吹くことになるのでしょうか。 2015 年はLGBT ムーブメント飛躍の年でした。まず5 月にカトリック教徒の多いアイルランドで、国民投票の結果として、同性婚を認める法律が法制化されることが決まりました。翌月にアメリカ合衆国連邦最高裁は、同性婚は「法の平等な保護」を定めた合衆国憲法の下の権利であるとして、同性婚を禁止する州法を違憲と判断し、同性婚が合法となりました。特筆すべきは、2015 年8 月には2014 年末の国際オリンピック委員会での決議を受け、オリンピック憲章根本原則6 条に「性的指向」への差別撤廃が盛り込まれたことでした。 また日本では、海外では10 年以上も前に巻き起こっていた「同性パートナーシップの公的認証制度(同性愛者等に、異性愛者間の婚姻と同等もしくはそれに近い権利・機会を与える制度)」制定の波が来ました。昨年来、東京都渋谷区、同世田谷区、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市、三重県伊賀市などの自治体で同制度について検討がなされ、すでにその導入が始まっています。多くの民間企業も、これに関連する新しいサービスを模索し始めています。そして教育行政も新たな局面を迎えており、文部科学省が性的少数者への配慮を求める通知を全国の小中高校へ送るといった取り組みも始まっています。 今年6 月6 日には、「ドメスティックパートナー札幌」という団体が「同性カップルを含む『同性パートナーシップの公的認証』に関する要望書」を秋元克広札幌市長に提出しました。秋元市長は制度創設を検討することを明らかにしました。しかし今後、性的少数者が「シティズンシップ」を享受するためには、行政や性的多数者の理解を得るための様々な活動や「市民運動」を行わなければなりません。その一方で、表現の自由を許容する現代社会にあっても、そのような活動を制限する流れがあることも事実です。 本フォーラムでは三人の提題者から、「シティズンシップ」と「市民運動」の可能性と課題について、LGBT をとりまく日本の諸状況を踏まえた報告がなされ、それをめぐって議論が交わされました。私たち本フォーラム企画者は、本記録が持続可能な「私たちの街づくり」を探る新たな一歩となることを祈っています。
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Recent Submissions蔵田, 伸雄 (2017) シティズンシップと市民運動 : LGBTをとりまく日本的事情. 北海道大学大学院文学研究科応用倫理研究教育センター主催 一般公開フォーラム シティズンシップと市民運動~LGBTをとりまく日本的事情~」資料 2016年12月18日開催(北海道大学学術交流会館)
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