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北海道中央部,大雪火山群の地質学的および岩石学的研究 : 島弧会合部における長期火山活動とマグマ変遷の関連について

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k12869
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Title: 北海道中央部,大雪火山群の地質学的および岩石学的研究 : 島弧会合部における長期火山活動とマグマ変遷の関連について
Authors: 石毛, 康介 Browse this author
Issue Date: 25-Sep-2017
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 大雪火山群は千島弧の最南端に位置する大雪―十勝火山列の北部を構成し,1 Ma 以降に活動した安山岩質の成層火山および溶岩ドーム群を形成してきた.大雪火山群の全域に及ぶ地質学的研究は,主に地形の保存状態に基づいた複数の層序学的研究が行われてきたが,1980 年以降ほとんど進展がない.またそれらの層序区分に基づき,K-Ar 年代測定が行われているが (NEDO, 1990) ,得られた年代値は層序と矛盾することが多く,また年代値のばらつきが大きかった.一方,岩石学的研究についても,個々の代表的な火山についてのマグマ変遷は研究されてきたが(例えば,佐藤・和田, 2007),火山群の全体についての長期マグマ変遷に関する研究は行われていない.そこで本研究では,まず大雪火山群全体の詳細な地質調査,岩石学的検討及び系統的な放射性年代測定を行い,火山体の構造,形成史及び地下深部のマグマ変遷について明らかにすることを目指した. 大雪火山群の活動は,噴出中心,地形の保存状態,岩石学的特徴及び活動年代から古期 (ca. 1 Ma~ca. 0.7 Ma) と新期 (ca. 0.2Ma~) に区分される.K-Ar 年代測定の結果,0.66~0.16 Ma を示す噴出物は認められず,古期と新期との間には約50 万年間の活動休止期が存在したことが明らかとなった.古期では,安山岩質溶岩からなる平坦面状の地形で特徴づけられる,南北に配列した複数の楯状火山体が形成された.また,同時期には火山群東方で,小規模な単成火山を複数形成する活動があったことも明らかになり,高根ヶ原東方火山群と命名した.新期では,複数の成層火山体や溶岩ドームが火山群中央部~北部に形成された.さらに新期の活動は噴火様式の違いに基づいて,Y1, Y2 及び Y3 の 3 つのサブステージに細分できる.Y1 サブステージ (0.2~0.05 Ma) では,火山群北西部~中央部に成層火山及び複数の溶岩ドームを形成した.Y2 サブステージ (34 ka) では,本火山群においては例外的な大規模な火砕噴火が発生し,火山群中央部に直径 2 km の御鉢平カルデラが形成された.Y3 サブステージ (34 ka~0 ka) では,噴出中心が大雪火山群の南西部に移動し,成層火山である旭岳や複数の溶岩ドームが形成された.さらにY3 サブステージの中でも最新の火山体である旭岳火山を対象により解像度の高い噴火史の検討を行った.その結果,旭岳の活動を主にマグマ噴火を行った前期と水蒸気噴火を行った後期活動に分けられ,前期活動は約5,000 年前に終了したことが分かった.後期では 2,800 年前と 700 年前に水蒸気噴火が発生したことが明らかになった.本火山群の岩石は玄武岩質安山岩~デイサイトであり,多くの岩石には苦鉄質包有物が含まれる.これら岩石の全岩 SiO2 量は母岩では 54~69 wt. %,苦鉄質包有物では 52~59 wt. %である.全岩化学組成で見ると,主・微量成分組成及び Sr・Nd・Pb 同位体比で,古期と新期の苦鉄質包有物では区別ができないが,母岩では両活動期で明瞭に区別ができた.次にこれらの地質学的及び岩石学的データをもとに以下の議論を行った.まずそれぞれの活動期の地質ユニット毎の噴出量を求め,それらと放射年代データに基づき,100 万年間の大雪火山群の時間-累積噴出物量図(階段図)を初めて作成した.そして長期噴出率の時間変化を検討した.平均噴出率は,古期が >0.08 km³DRE / ky,新期が >0.3 km³DRE /ky であるが,古期については,0.82~0.74 Ma の間で噴出率が 0.4 km3 DRE /ky となり,最も高くなる.新期の各サブステージで,カルデラを形成した Y2 サブステージを除くと,Y1 サブステージでは0.11~0.09 Ma の間,Y3 サブステージでは 15~9 ka で噴出率が最も高くなる.このように活動期毎で,噴出率が最初は低く,途中で最大となり,後半でまた低下する変化が認められた.これは単一のマントルダイアピルの上昇と冷却で説明が可能であり,大雪火山群では数万~数十万年程度の寿命のマントルダイアピルが活動期に対応して複数回上昇したと考えられる.また,50万年間の活動休止期は,本火山群南方に位置するトムラウシ火山群でもほぼ同時期に長期の活動休止期が報告されている.このことから,この時期に北海道中央部の火山活動に広範囲にわたって影響を及ぼすような事象が発生したと考えられる.これは島弧会合部という場が関係していると考えられるが,詳細は今後の課題である.さらに最近の約 2 万年間の活動履歴を解析し,特に旭岳山体の長期活動評価も行った.その結果,現在の旭岳のマグマ活動は低調になりつつあり,水蒸気噴火の発生する可能性は高いものの,中長期的には活動を終え,新たな火山体の形成に引き継がれる可能性を指摘できた.次にマグマの長期変遷を検討した.古期と新期の溶岩はいずれも苦鉄質包有物を普遍的に含むことや各活動期での全岩化学組成変化の特徴から,苦鉄質マグマと珪長質マグマの端成分マグマ混合が支配的なプロセスであったと考えられる.液相濃集元素比や同位体比によると,古期と新期いずれの珪長質マグマも苦鉄質マグマの結晶分化作用だけでは生成できず,地殻の部分溶融や AFC (Assimilation and Fractional Crystallization) プロセスが必要である.古期及び新期とも,高温側マグマである苦鉄質マグマは類似しており,100 万年間を通じて大きな変化はない.一方,珪長質マグマは古期では苦鉄質包有物と母岩の Sr 同位体比や Rb や Zr などの液相濃集元素比が異なり,また多様である.一方,新期では苦鉄質包有物と母岩の同位体比が類似し,また新期を通じて珪長質マグマは均質となる.これらことから,苦鉄質マグマが地殻物質と相互作用を起こし珪長質マグマを生成する場合,古期では地殻物質が不均質であるため多様な珪長質マグマが生じたのに対し,新期では均質な地殻物質を部分溶融して均質な珪長質マグマが生じたと考えられる.つまり,古期の活動から新期が活動するまでに,大雪火山群の地殻が均質化したことになり,その原因は古期活動の苦鉄質マグマが地殻と相互作用をした結果と推定できる.このことは新期の珪長質マグマの同位体比組成が苦鉄質マグマのそれと類似していることとも調和的である.
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第12869号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 理学
Examination Committee Members: (主査) 教授 中川 光弘, 教授 村上 亮, 准教授 栗谷 豪, 助教 吉村 俊平
Degree Affiliation: 理学院(自然史科学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/67397
Appears in Collections:学位論文 (Theses) > 博士 (理学)
課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 理学院(Graduate School of Science)

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