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地域医療における人的資源および画像診断機器の配置と需給評価に関する研究

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.r7101
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Title: 地域医療における人的資源および画像診断機器の配置と需給評価に関する研究
Authors: 石川, 智基 Browse this author →KAKEN DB
Issue Date: 30-Jun-2020
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 人口の高齢化が進む国際社会において、国民が医療にかかる機会を継続的に担保するために、医療資源の確保およびその配分の適正化は各国共通の課題である。特に、人口減少と過疎化を伴う少子高齢化が進行している診断における医療需要の変化は、地域によって多様な形で発生することが予測されている。医療需給バランスの均衡を維持する観点から、政府のマクロな医療政策に加えて、地域が作成する医療計画の中で、根拠に基づく政策立案を通じて将来的な需要変化への対策を講じることが求められている。こうした対策の立案を支援するために、基幹統計や行政管理のビッグデータの分析環境が整備され、データに基づいた政策エビデンスの創出が期待されているが、そのための分析手法について提案する研究は少なく、医療需給バランスの現状把握、および将来予測を行うことは困難である。都道府県における医療計画は、需要にあった資源配分の最適化・均てん化を通して、地域住民に受診機会を担保することを目的のひとつとしているが、前述の通り分析手法が確立されていないため、「医師等の不足資源の充足に関する分析」や「疾患別の医療需要推計」、「資源配置とアクセスの関係についての分析」、「余剰可能性のある医療資源の配置と利用に関する分析」といった、既に課題として挙げられていながら、データに基づいた議論が困難な事柄が存在する。先行研究においても、地域における医療需要と医療供給およびそのバランス評価という視点から報告された事例は少なく、分析手法と、分析によって得られる知見についての考察が乏しい。本論文は、課題として指摘されている「医師の不足と偏在」「疾患別需要推計」「資源配置とアクセスにおける関係の評価」「画像診断機器の配置と利用における関係の評価」といった各課題について、経営管理学や医療情報学の知見を応用した分析を通じて、医療需給評価に関する一体的な分析手法の提案を目的とする。 第1章では医療需要に影響を与える人口構造の変化と需給評価における課題をまとめた。医療需給や医療提供体制上の背景について、医療政策・経済的な観点から俯瞰し課題を指摘する。同時に、医療政策における中長期計画の重要性および分析手法の必要性について述べる。 第2章では供給サイドの推計をテーマとして「医師の不足と偏在の将来予測に関する研究」についてまとめた。本章では、経営学やオペレーションズリサーチ分野で活用されるSystem Dynamics の概念を日本の医師不足問題に応用し、医師養成キャリアパスに基づく医師数予測モデルを構築した。この予測モデルを用いて、医師養成施策を考慮した全国医師数と診療科別医師数の予測を行った。さらに、地理情報システムの活用により、北海道をケースとした偏在評価の分析を行った結果、日本全体および北海道全体では医師絶対数は充足するが、診療科偏在と地域偏在の双方とも課題として解消されない可能性が示され、医師の診療地域に対する制度介入の余地があることが指摘された。 第3章では需要サイドの推計をテーマとして「人口構造の変化が地域の疾患別需要に与える影響に関する研究」についてまとめた。患者調査を用いて、疾患別の需要推計モデルを構築した。先行研究では、疾患別の受療率をパラメータとした将来需要の推計が推奨されていたが、診断では人口あたりの供給量が指標として活用されてきた。本章では、脳卒中・急性心筋梗塞、および全患者数を対象とし、将来受療数および受療数対医師数を算出した後に市場の集中度を表すハーフィンダール・ハーシュマン指数およびGini 係数を算出し、資源の偏在を評価した。結果として、脳卒中・急性心筋梗塞の治療に従事する医師数の偏在は改善されていくが、全患者数との比較から改善の余地があることが示された。また、従来使用されてきた人口当たり医師数等に代替する指標として患者の受療数に基づく資源配置の提案が可能であった。 第4章では医療需給評価をテーマとして、「急性期疾患における資源配置と治療へのアクセスの関連についての研究」についてまとめた。需給バランスを、治療や機器へのアクセシビリティという観点から評価を行うために、地理情報システムを使用した分析を行った。対象地域は前章と同様で、対象疾患を脳卒中と急性心筋梗塞とした。また、評価対象となる医療資源を「治療可能施設」「CT 装置」「アンギオグラフィ装置」「専門医師」とし、10 分以内で搬送可能な人口カバー率をアクセシビリティの評価指標として算出した結果、「治療可能施設」へのアクセスは「専門医師」へのアクセスと読み換えられ、専門医師へのアクセスを担保することが治療可能施設へのアクセスを高める可能性があることが分かった。 第5章では、医療需給評価をテーマとして「画像診断機器の配置と利用の関連についての研究」についてまとめた。医療の需給バランスについて、機器の配置と利用に関する実態把握という観点から、厚生労働省が管理している我が国の全レセプトデータを格納しているレセプト情報・特定健診等情報データベースと医療施設調査を活用し、画像診断機器の配置と利用状況の分析を行った。前章で高水準にアクセス可能なことが示されたCT に加えて、MRI およびPET の各二次医療圏別の保有台数、総検査数および1台あたりの検査数を算出し、地域別の比較を行った。その結果、配置と利用には非線形関係があることが示唆され、外部変数によって規定される非線形のトレードオフ関係があることが明らかとなった。 第2章、第3章では医療の供給と需要を各々評価するためのモデル構築と推計によって、需給推計には地域と疾患を同時に考慮した分析が重要であることを示唆した。第4章、第5章では需給バランスを総合的に評価する視点から分析を行い、資源配置の多寡のみではなくアクセスや利用実態に基づいた分析によって、急性期の専門医の確保に課題があることや、診断機器の高水準配置が必ずしも高水準の利用に繋がっていないことを示唆した。さらに、本稿では、制度形成において、モデルの構築、分析、評価を行うまでのプロセスとして、一体的な方法論として提案を行っている。使用しているデータは基幹統計や公的なデータベースを活用しており、我が国の医療政策を担当する各省庁や、自治体の担当者の分析手法として提案可能である。本稿で提示したモデルや方法論が、医療政策や地域の中長期医療計画の立案等に利活用される過程を通じて新たな視点として提供されることを期待する。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 乙第7101号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 保健科学
Examination Committee Members: (主査) 特任教授 齋藤 健, 教授 小笠原 克彦, 教授 神島 保, 客員教授 中谷 純
Degree Affiliation: 保健科学院
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/78903
Appears in Collections:論文博士 (Doctorate by way of Dissertation) > 保健科学院(Graduate School of Health Sciences)
学位論文 (Theses) > 博士 (保健科学)

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