HUSCAP logo Hokkaido Univ. logo

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers >
Theses >
博士 (保健科学) >

変形性膝関節症症例における日常生活活動および生活の質と動的姿勢制御との関連性の検討

Files in This Item:
Kento_Sabashi.pdf1.48 MBPDFView/Open
Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k14671
Related Items in HUSCAP:

Title: 変形性膝関節症症例における日常生活活動および生活の質と動的姿勢制御との関連性の検討
Authors: 佐橋, 健人 Browse this author
Issue Date: 24-Sep-2021
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 1. 緒言 変形性関節症(osteoarthritis,OA)は膝関節で発症率が高く,加齢に伴い有病率 が増加することから,膝 OA は高齢者における一般的な整形外科的疾患とされてい る.膝 OA は膝痛や筋力低下,関節可動域制限,固有感覚低下,姿勢制御能力低下 といった様々な機能障害を呈する.その結果,膝 OA 症例では日常生活活動 (activities of daily living,ADL)の制限や,生活の質(quality of life,QOL)の低下 を引き起こすことが知られている. 姿勢制御は,身体質量中心(center of mass,COM)の随意的な変位を伴わない 状態での姿勢保持である静的姿勢制御と,COM の随意的な変位を伴う運動における 姿勢保持である動的姿勢制御の 2 種類に分類できる.これまでの研究において,膝 OA 症例は健常群と比較し,静的および動的姿勢制御能力が低下していることが明ら かとなっている.姿勢制御は ADL を行う上で重要な基本的機能であり,膝 OA 症例 の ADL 制限や QOL 低下に関与している可能性がある.これまで膝 OA 症例の静的 姿勢制御と ADL および QOL との関連性を報告している研究が報告されてきたが, 弱い関連もしくは有意な関連を認めず,極めて限定的であった.ADL では歩行や階 段昇降のように動的な姿勢制御を必要とされる場面が多く,静的姿勢制御のような 固定された支持基底面(base of support,BOS)で COM を安定させる姿勢制御では 膝 OA 症例の ADL や QOL の状態を十分に反映できていなかった可能性がある.し かしながら,膝 OA 症例の動的姿勢制御と ADL および QOL の関連性を調査した研 究はなく,不明であった.したがって,本研究の目的は膝 OA 症例の動的姿勢制御 と ADL および QOL の関連性を検討することとした. 2. 対象と方法 対象は膝 OA 症例 36 例,平均年齢 72.2 歳,男性 7 例,女性 29 例である.動的 姿勢制御評価には,両脚立位から片脚立位への移行動作を用いた.床反力計にて足 圧中心(center of pressure,COP)を算出した.両脚立位から片脚立位への移行動作 は,左右方向の動きが中心であるため,左右方向の COP のみを解析した.得られた COP データから,はじめに遊脚側方向へ変位する予測的姿勢制御(anticipatory postural adjustments,APA)相,その後遊脚側下肢が地面から離れるとともに立脚側 方向へ COP が変位する移行相を定義した.各相における COP 最大変位,COP ピー ク速度を算出した.それぞれ立脚側方向を正と定義したため,APA 相の COP 最大変 位,COP ピーク速度は負,移行相の COP 最大変位,COP ピーク速度は正となっ た.膝 OA 症例の ADL・QOL の評価に Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score (KOOS)の ADL および QOL の下位尺度を用いた.また,疼痛の下位尺度から立 位時の疼痛の項目から,疼痛の有無を評価した.X 線画像評価で,Kellgren-Lawrence (KL)grade を用いて膝 OA の重症度を評価し,大腿脛骨角(femorotibial angle, FTA)を用いて膝関節のアライメントを評価した.統計学的解析では,片脚立位移 行動作中の動的姿勢制御変数と KOOS-ADL および KOOS-QOL との相関性を検討す るために Pearson の積率相関係数を算出した.さらに KOOS-ADL および KOOS-QOL を予測するためにステップワイズ法による重回帰分析を行った.全ての統計学的有 意水準は P < 0.05 とした. 3. 結果 KOOS-ADL の平均点数は 64.5,KOOS-QOL の平均点数は 32.7 であった. APA 相において,COP 最大変位は KOOS-ADL(r = -0.353,P = 0.035)および KOOS-QOL(r = -0.379,P = 0.023)と有意な負の相関を示した.移行相において, COP 最大変位およびピーク速度は KOOS-ADL(最大変位:r = 0.352,P = 0.035;ピ ーク速度:r = 0.438,P = 0.008)および KOOS-QOL(最大変位:r = 0.357,P = 0.032;ピーク速度:r = 0.343,P = 0.040)と有意な負の相関を示した. 重回帰分析の結果,移行相の COP ピーク速度(β = 0.310,P = 0.040),年齢(β = -0.331,P = 0.032),立位時の膝痛(β = -0.471,P = 0.001)が,KOOS-ADL の有意な 予測変数であった(R2 = 0.446, P < 0.001).また,APA 相の COP 最大変位(β = - 0.431,P = 0.005),KL grade(β = -0.308,P = 0.037),立位時の膝痛(β = -0.377,P = 0.012)が,KOOS-QOL の有意な予測変数であった(R2 = 0.366,P = 0.002). 4. 考察 APA 相における大きな COP 変位,移行相における大きくかつ速い COP 変位は 良好な KOOS-ADL および KOOS-QOL スコアと相関することが明らかとなった.さ らに,重回帰分析の結果,良好な KOOS-ADL スコアは年齢と立位時の膝痛の有無の ほかに,移行相の速い COP 変位によって予測された.また良好な KOOS-QOL スコ アは,OA の重症度と立位時の膝痛のほかに,APA 相での大きな COP 変位によって 予測された.APA 相での小さく遅い COP 変位は,COM に対する慣性力が低下し, 立脚相へ COM を変位させるだけの推進力が不十分となる.また,移行相での小さく 遅い COP 変位は,立脚側の新しい BOS へ十分に COM を変位させることができず, 片脚立位保持が困難となる.それゆえ,APA 相および移行相における大きくかつ速 い COP 変位は,一般的に動的姿勢制御能力が良好であることを意味する.本研究結 果は,膝 OA 症例のおける APA 相および移行相の良好な動的姿勢制御が,ADL およ び QOL の良好なスコアと関連することを示した. 静的姿勢制御は,固定された BOS で COM を安定させる能力であり,ADL で必 要とされる場面は少ない.一方で,両脚立位から片脚立位への移行動作は,BOS を 変化させながら COM を随意的に変位させる動作であり,歩行や階段昇降といった ADL に含まれる基本的動作である.それゆえ,片脚立位への移行動作のような動的 姿勢制御は膝 OA 症例の ADL や QOL を予測する上で,静的姿勢制御よりも有用な 評価である可能性が考えられた.膝 OA 症例の転倒リスク評価で片脚立位保持時間 が臨床で広く用いられているが,ADL や QOL の観点から両脚立位から片脚立位へ の移行中の姿勢制御にも着目する必要があると考えられた.
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第14671号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 保健科学
Examination Committee Members: (主査) 教授 浅賀 忠義, 教授 遠山 晴一, 教授 生駒 一憲 (北海道大学病院リハビリテーション科)
Degree Affiliation: 保健科学院(保健科学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/82969
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 保健科学院(Graduate School of Health Sciences)
学位論文 (Theses) > 博士 (保健科学)

Export metadata:

OAI-PMH ( junii2 , jpcoar_1.0 )

MathJax is now OFF:


 

 - Hokkaido University