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社会内処遇における電子監視制度 : アメリカ、ドイツ、日本の状況から見た中国法への示唆

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k14629
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Title: 社会内処遇における電子監視制度 : アメリカ、ドイツ、日本の状況から見た中国法への示唆
Authors: 張, 暁航 Browse this author
Keywords: 電子監視
刑事政策
社会復帰
社会防衛
刑罰の執行
Issue Date: 24-Sep-2021
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 通常、電子監視とは、犯罪者または特定の人物が「被監視場所(通常は犯罪者の家)にいる」または「一定の範囲内にある」条件に適合しているかどうかを監視するために使用される装置をいう。現在の司法実践で各国に採用されている電子監視設備は、主に第2世代電子監視装置RF設備及びGPS衛星測位システムに基づく第3世代電子監視装置である。 刑事司法分野で、電子監視を活用しようと試み、初めて電子監視を実行に移したのはアメリカである。アメリカにおいて、電子監視が導入されてから数十年の月日が流れたものの、プライバシー権をはじめとする人権を不当に制約しているのではないか、電子監視は残虐で異常な刑罰に当たり修正8条に違反するのではないか、平等権の保護を謳った修正14条に違反するのではないかなど、その合憲性について、裁判上の争点が生じており、議論が行われている。 アメリカに比べ、ドイツの司法実務における電子監視の適用範囲は極めて限られており、このような現象が引き起こされた要因は電子監視自体が持つ不確実性に関連し、ドイツの司法文化や世論にもかかわっている。まず、ドイツの現在の量刑の実践の中で、刑罰に関する裁量活動が簡略化の方向に向かって発展する傾向が現れた。裁量者は行為の重大さに過度に依存し、刑罰の一般的な予防または特別予防の目的が徐々に周縁化された。第二に、電子監視の実証研究の結論は人々の予想に証明しておらず、人々の予想にも反していないが、簡単な監視手段としての電子監視だけではドイツの刑事政策では広く受け入れられないとされている。第三に、電子監視が専門知識に基づく予測と厳格なデータ情報の保護に関わるため、裁判官は電子監視の使用を回避し、伝統的な監督方式に採用する傾向がある。最後に、電子監視及び司法の私有化に対する公衆の抵抗心理は、電子監視が立法行動に付される可能性をさらに低下させたのである。 日本の既存の制度の枠組みの下で電子監視を導入するとすれば、それを保護観察の特別遵守事項の一つとして加えることが考えられる。しかし、現在の電子監視は主に「監督」と「制御」に基づいており、機能的には「補導」と「援護」を主な目標とする更生保護制度とは合致していないといえる。結局、電子監視尊入の可否は、施設内処遇の延長線としての保護観察はどうあるべきかという理念的な問題に立ち戻らざるを得ない。伝統的な保護観察が正しいのか否かはとりあえず措くとしても、電子監視の原理や正当化根拠に立ち返り、将来に亘って妥当性を有する電子監視制度の理論的支柱を構築するのは、まだ非常に困難であると思われる。 電子監視に対して、各法域が示している異なる態度は、異なる制裁制度の表現として理解されるべきである。現在世界各国・地域で採用されている電子監視は目標と概念の枠組みでそれぞれ異なるため、電子監視は今後、全く新しい方式で刑罰の執行の分野に現れ、社会復帰と社会防衛に基づく刑事理念も電子監視の適用によって新たなバランスが整われることが見込まれる。刑罰の目的は単なる罪に対する応報ではなく、刑罰の賦課によって、社会の人々の安全を保障することも刑罰の目的である。したがって、様々な観点に基づいて刑罰を実行する必要もある。電子監視の発展過程を全体的に見ると、電子監視の法律的属性は主にその機能性に反映されているが、行為者の自由に対する制限の視点から見て、電子監視は罰則ともみなされる。電子監視の異なる法律属性に対して、電子監視は刑罰の実施の具体的な措置と見なすことができる。すなわち、それ自体は懲罰であり、拘禁刑の代替形態ともなりうるだけではなく、拘禁刑と刑事施設外電子監視を総合的に運用することもできる。 中国における社区矯正制度の推進により、対象者の再犯・再非行を防ぎ、効果的な監督を行うことが実務上直面している課題点となっている。中国における一部の地域で導入されていた電子監視制度は、社区矯正制度の実施面において重要な意義を持つものと言える。しかしながら、対象者の位置情報を「知る」ことができる電子監視については、対象者が予め定められた行動範囲から逸脱することを回避し、対象者の再犯防止における対策の効果をできる限り的確に捉えるのは、将来において解決すべき問題である。既存の制度の改善を検討した上で、他国の制度や取組み状況等の情報を参考しながら、法制度設計の基礎理論をできるだけ優れたものにする必要がある。さらに、社区矯正実務の実際のニーズに応じて、腕輪・足輪による電子監視の試行の地域範囲をさらに拡大し、電子監視と他の社区矯正の実践の相互補完の実現を目的とし、電子監督制度の効果を上げるべきである。 対象者に対する監督の方式の一つとして、中国においては電子監視の実行の正当性又は必要性が認められる。ただし、社区矯正における電子監視の適用については、必ず実証研究を行ったうえで、実際に得られた効果を根拠に、電子監視対象者を選定しなければなら ない。中国の法律によると、全ての社区矯正対象者は電子監視対象者になる可能性があるが、他の国の実証研究の結論から言えば、対象者に対するパーソナライズされた働きかけを行うべきであり、異なる類型の犯罪・犯罪者を無差別で監視することは適切ではない。従って、社区矯正制度における電子監視の許容限度について、関連する法律を改善し、電子監視の相当性及びヒューマニゼーションの考えに留意しながら、マルチレベル方式の電子監視システムの構築を目指すべきである。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第14629号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 法学
Examination Committee Members: (主査) 教授 城下 裕二, 教授 小名木 明宏, 教授 上田 信太郎
Degree Affiliation: 法学研究科(法学政治学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/83125
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 法学研究科(Graduate School of Law)
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