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Studies on cell tropism of hemorrhagic fever viruses and mechanisms of entry into cells

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k14553
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Title: Studies on cell tropism of hemorrhagic fever viruses and mechanisms of entry into cells
Other Titles: 出血熱ウイルスの細胞指向性と細胞侵入メカニズムに関する研究
Authors: 齋藤, 健 Browse this author
Issue Date: 25-Mar-2021
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 出血熱を引き起こすウイルスは主に7つのウイルス科(フィロウイルス科、アレナウイルス科、フラビウイルス科、ナイロウイルス科、ハンタウイルス科、フェニュイウイルス科、パラミクソウイルス科)に属する。これらのウイルスはエンベロープを有する、マイナス鎖RNA ウイルスである。フィロウイルス科に属する Ebola virus (EBOV) および Marburg virus (MARV)や、アレナウイルス科に属する Lassa virus (LASV) および Lujo virus (LUJV)などによるウイルス性出血熱の致死率は高く、これらのウイルスは Biosafety level (BSL)-4 施設で扱わなければならない病原体として分類されている。EBOV、MARV、LASV および LUJV の細胞侵入過程において、表面糖蛋白質 GP が宿主細胞に発現しているレセプターに結合することが必須である。GP はウイルスの標的細胞決定に重要であるとともに、中和抗体などの治療薬のターゲットである。また、GP とレセプターの相互作用は宿主特異性を規定する因子でもある。本論文では EBOV、MARV、LASV および LUJV の GP により規定される細胞指向性と細胞侵入メカニズムに関する研究を行った。 EBOV と MARV に代表されるフィロウイルスはヒトを含む霊長類に高い致死率の出血熱を引き起こす。これらのフィロウイルス感染症に対するワクチンや治療法は限られており、その原因の一つとして、実験を BSL-4 施設で行わなければならない制限が挙げられる。第一章では BSL-2 あるいは BSL-3 施設で抗フィロウイルス薬のスクリーニング実施が可能な代替動物実験モデルの確立を試みた。まず、EBOV と MARV の表面糖蛋白質 (GP)に注目し、水胞性口炎ウイルス (VSV)の G 蛋白質遺伝子を EBOV および MARV の GP 遺伝子に置換した組換えウイルス(rVSV/EBOV および rVSV/MARV) を作出した。動物種ごとの感受性を比較するために rVSV/EBOV をマウス、ラットおよびシリアンハムスターに感染させたところ、シリアンハムスターでのみ顕著な体重減少が認められ、rVSV/EBOV 感染ハムスターは感染後4日以内で死亡した。rVSV/MARV も同様にハムスターに対して致死的感染を引き起こした。rVSV/EBOV および rVSV/MARV 感染ハムスターの全身の臓器でウイルスの増殖が認められた。特に、肝臓、脾臓、腎臓および肺でのウイルス感染価が高かった。病理学的解析から、VSV が肝細胞、単球、リンパ球および神経細胞といった広範囲な細胞に感染していたのに比較して、rVSV/EBOV と rVSV/MARV では肝細胞、マクロファージおよび単球系細胞といった実際の EBOV および MARVが 標的とする細胞に感染する傾向がある事が分かった。また、rVSV/EBOV 感染ハムスターでは白血球数の減少および AST と ALP の上昇がみられ、ヒトの EBOV 感染でみられる臨床所見との類似点が認められた。以上の結果から、rVSV/EBOV と rVSV/MARV の組織特異性や病原性には GP が強く関与していることが示唆された。次に、rVSV/EBOV 感染前後に抗 EBOV 中和抗体を投与したところ、体重減少の消失と致死率の低下といった治療効果が認められた。これらの結果は、このフィロウイルス感染代替動物モデルは GP に作用する中和抗体や化合物などの抗フィロウイルス薬の in vivo スクリーニングに有用である事を示している。 第二章では、哺乳類アレナウイルス属に属するルジョウイルス(LUJV)に対する細胞感受性を規定する宿主因子に関する研究を行った。LUJV は2008年にザンビアおよび南アフリカで小規模のウイルス性出血熱の流行を引き起こしたウイルスであり、感染者5人中4人が死亡した。しかし、2008年以降、LUJV 感染の報告はなく、加えてげっ歯類を対象とした疫学調査においても LUJV は検出されておらず、LUJV の生態、宿主域および自然宿主に関する知見は殆どない。本研究では、まず LUJV の表面糖蛋白質 GP を纏ったシュードタイプウイルス(VSVΔG-LUJV/GP)に対する細胞株の感受性を比較したところ、ヒト由来の細胞株(Huh7、HEK293T)は高感受性であったのに対し、マウス由来細胞株(NIH3T3)とハムスター由来細胞株(BHK)は低感受性であることことが分かった。そこで、この感受性の違いに関与する宿主因子の解析を行った。LUJV の細胞内侵入に関わる宿主因子として Neuropilin 2(NRP2)と CD63 が報告されている。CD63 は LUJV の細胞内侵入過程における膜融合レセプターとして報告されている。NRP2 のアミノ酸配列を比較したところ、LUJV の GP との相互作用に重要な CUB1 領域における配列の違いは、ヒト、マウスおよびハムスターの間でほとんど認められなかった事から CD63 に着目した。VSVΔG-LUJV/GP に殆ど感受性を示さなかった BHK 細胞に、ヒト、マウス、マウスおよびハムスター CD63 を発現させたところ、ヒト CD63 を発現させた場合のみ VSVΔG-LUJV/GP に対する感受性が有意に上昇した。この結果は CD63 がヒトとげっ歯類細胞株間における LUJV に対する感受性を規定していることを示している。次に、ヒト CD63 において LUJV 感染に重要である領域を探索した。ヒトとマウス CD63 のキメラ CD63 を BHK 細胞に発現させ、VSVΔG-LUJV/GP の感染性の変化を解析した結果、ヒト CD63 の Large extracellular loop(LEL)領域が LUJV 感染に重要である事が分かった。さらに、LEL 領域の141番目から150番目のアミノ酸、特に143番目のフェニルアラニンが LUJV 感染に重要であることが示唆された。また、このアミノ酸は LUJV の GP による膜融合に重要であることが分かった。CD63 の143番目のフェニルアラニンはマウスやラットを含む一部のげっ歯類を除いた哺乳類で広く保存されていたことから、LUJV は広い宿主域をもつ可能性が示唆された。 出血熱ウイルスの表面糖蛋白質 GP は細胞侵入過程、組織特異性、宿主域に関与する。このため出血熱ウイルスによる病原性発現を理解し、対策を構築するには機能的 GP の理解および応用が必須である。本研究で構築したフィロウイルス感染代替動物モデルは GP による組織特異性を応用したものであり、GP による病原性発現の評価や GP を狙った抗ウイルス薬の評価に広く利用されることが期待される。また LUJV GP とレセプターの相互作用は LUJV 感受性の決定に重要であることから、特に CD63 が細胞株の感受性を規定することを示した。感染性ウイルスを用いた詳細な解析が期待されるが、本研究で得られた知見は抗 LUJV 薬の開発や宿主域の推定・特定において重要な情報である。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第14553号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 獣医学
Examination Committee Members: (主査) 教授 澤 洋文, 教授 髙田 礼人, 教授 木村 享史(獣医学院), 講師 松野 啓太
Degree Affiliation: 国際感染症学院(感染症学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/84520
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 国際感染症学院(Graduate School of Infectious Diseases)
学位論文 (Theses) > 博士 (獣医学)

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