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超音波生体作用研究用照射容器の内部音場の可視化と制御に関する研究

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k15216
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Title: 超音波生体作用研究用照射容器の内部音場の可視化と制御に関する研究
Other Titles: Studies on visualization and control of ultrasound fields inside exposure chambers used for evaluation of ultrasound-related biological effects
Authors: 相川, 武司 Browse this author
Issue Date: 26-Sep-2022
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 診断や治療の分野で広く利用されている超音波の分野では,強度や圧力をはじめとする種々の照射量と生体作用を関連づける研究が古くから行われてきた.安全な超音波診断の実現には,生体に作用を与えない超音波出力の上限値を,確実な超音波治療の実現には生体に作用を与える下限値を,様々な機序について明らかにする必要がある.上限値と下限値を明らかにする基礎実験として,容器内の培養細胞に超音波を照射する実験が広く行われているが,細胞が実際に受ける超音波照射量を正確に評価することは難しい.超音波と同様に診断と治療に利用される放射線では,照射量として放射線源の放射線量が用いられる.放射線は透過性が高く,細胞が受ける照射量はほぼ放射線量のみで決まるためである.一方,超音波でも強度や負圧が照射量の主な指標として用いられるものの,細胞が実際に受ける照射量が超音波振動子の出力のみでは決まらないという問題点がある.これは,超音波が音響インピーダンスの境界で容易に反射・屈折を生じることから,細胞が受ける照射量が照射対象や容器などの周囲環境の影響を受けて複雑に変化するためである.それゆえ,培養細胞に超音波を照射する実験の再現性は低く,これを解決するための超音波照射容器の改良が行われてきた.最近の研究では細胞培養に適したシャーレと吸音材を組み合わせた容器が反射の起きにくい照射容器として使われているが,小型閉空間内に生じる複雑な音場の計測は難しく,内部音場の均一性は実証されていない.さらに,高強度超音波治療における主要な作用機序であるキャビテーションの発生と内部音場の関連も十分に解明されていない.超音波の生体作用機序は,大きく熱的作用と非熱的作用に分けられる.熱的作用は超音波の吸収に基づく生体組織の温度上昇に起因し,非熱的作用は主として圧力振動に基づく機械的作用に起因する.非熱的作用の一種であるキャビテーションが起きると,振動する気泡の周囲に激しい機械的作用が生じ,気泡の断熱圧縮場内で発生するフリーラジカルが音響化学的作用を生じる.このキャビテーションの発生は定在波音場内で増強されることが知られているが,照射容器内に生じる定在波音場とそれがキャビテーションの発生に与える影響は十分明らかにされていない.そこで本研究では,超音波の生体作用研究が行われる 2 つの標準的な超音波照射条件,すなわちシャーレ内に低強度超音波を照射する条件と,水面に向けて高強度超音波を照射する条件で発生する超音波音場を光学的手法により可視化することで,照射環境による超音波音場の変化を明らかにし,生体作用の発生機序の理解を深めることを目的とする.まず,低強度超音波を用いる実験を想定し,小型容器内で反射・伝導する超音波と,音響放射力により生じる水面の波立ちで反射する超音波が内部音場に与える影響をフォーカストシャドウグラフ法により可視化した.その結果,壁内を伝搬する超音波が容器内に漏れ出し内部音場を乱すこと,容器の開口制限を受けた超音波の回折波が容器側壁で反射し内部音場を乱すことを確認した.また,波立ちの形状を模擬した容器の音場を可視化し,波立ちの内部に音圧の高い集束点が生じることを明らかにした.これらの結果は,内部音場の不均一性が細胞への作用実験の再現性の低さの原因となっている可能性を示していた.さらに,これらの影響を受けない超音波照射容器を提案し,その均一性を音場可視化により確認した.次に水面に向けて高強度超音波を照射した際に生じる水面の盛り上がりの内部音場について検討した.連続超音波により水面の盛り上がりを発生させ内部音場を可視化するとともに,その形状を模擬した容器の内部音場も可視化した.その結果,盛り上がりの高さが高くなるにつれて定在波のパターンが線状から格子状に変化し,ピーク音圧が増強されることが確認できた.また,有限要素法を用いたシミュレーションでは,定在波音場のパターンや音圧の変化の傾向に一致が見られた.特に,高音圧下では盛り上がりの水面直下に音圧の高い腹点群が発生することが確認され,腹点群が水面でのキャビテーション発生に重要な役割を果たすものと示唆された.最後に,超音波の生体作用発生の重要な機序の一つであるキャビテーションによるフリーラジカルの発生について検討した.実験の結果,フリーラジカルの発生,超音波霧化の発生,水面盛り上がりから水柱への水面形状の移行の超音波強度閾値が全て一致することを明らかにした.この結果は,水面形状の変化による超音波の集束が生体作用の発生に関する超音波強度閾値を見かけ上低下させることを意味している.以上本論文では,超音波の生体作用研究に用いられる超音波照射容器において音波の反射・屈折により音場が不均一となることを音場可視化により示し,音場を乱す要因を制御することで音場の均一性を向上する方策を示した.また,高強度超音波によって生じた水面の盛り上がりが格子状の定在波音場を形成し,それにより生体作用の発生に関する超音波強度の閾値を見かけ上低下させることを示した.これらの結果は超音波の生体作用研究において超音波照射容器内音場を可視化により把握し,音場制御や作用機序解明に応用することの重要性を示している.
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第15216号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 情報科学
Examination Committee Members: (主査) 准教授 工藤 信樹, 教授 渡邉 日出海, 教授 平田 拓, 教授 橋本 守
Degree Affiliation: 情報科学研究科(生命人間情報科学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/87203
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 情報科学院(Graduate School of Information Science and Technology)
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