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キタムラサキウニ (Mesocentrotus nudus) の新規卵黄タンパク質であるApolipoprotein B様タンパク質に関する生化学および分子生物学的研究 [全文の要約]

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Please use this identifier to cite or link to this item:http://hdl.handle.net/2115/89898
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Title: キタムラサキウニ (Mesocentrotus nudus) の新規卵黄タンパク質であるApolipoprotein B様タンパク質に関する生化学および分子生物学的研究 [全文の要約]
Authors: 由比, 智春 Browse this author
Issue Date: 23-Mar-2023
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 古くよりウニの生殖巣は食用として利用されており,北海道はその主要な生産地である。1980年以降,北海道を含めた日本各地においてウニ資源量の減少が進行し,それに伴い日本各地で種苗放流が行われた。しかし,ウニの資源量はいまだに増大していない。ウニの資源量が回復しない理由の一つとして,天然海域における配偶子形成の遅延や卵への栄養蓄積の不足などを要因とした卵質の悪化が挙げられる。この問題を解決するためには,卵への栄養の蓄積機構を解明するとともに,卵質を評価するバイオマーカーを用いた卵質異常の詳細な機構解明が必要である。 魚類においてはLarge Lipid Transfer Protein (LLTP) スーパーファミリーに属するvitellogenin (Vtg) のサブタイプあるいはそれらを由来とする卵黄タンパク質の卵黄中の量比が仔魚の生存率に影響すると報告されており,Vtgは卵質を評価するためのバイオマーカーになりうるタンパク質である。このことから,ウニにおいても卵黄タンパク質が卵質を評価するためのバイオマーカーになると考えられる。ウニ類においては,主要な卵黄タンパク質はトランスフェリンスーパーファミリーに属するMajor Yolk Protein (MYP) とされてきた。MYPは亜鉛および葉酸を結合し,卵母細胞への栄養輸送機能を担うタンパク質である。また,キタムラサキウニおよびエゾバフンウニにおいて新規卵黄タンパク質としてYolk-Related Protein (YRP) の存在が報告された。このYRPはLLTPスーパーファミリーに属し,糖・脂質などを結合していることから,胚発生に必要な栄養を卵へと輸送する機能を持つことが示唆された。 以上の報告より,ウニにおいてはYRPおよびMYPの2種の卵黄タンパク質が卵に蓄積されるタンパク質であり,これら2種の卵黄タンパク質はウニの卵質を評価する際のバイオマーカーとなりうると考えられる。しかし,2種の卵黄タンパク質の性状比較やYRPの主要な合成部位,卵への蓄積経路,卵におけるMYPおよびYRPの蓄積量に関する知見は不足している。そこで本研究では,ウニ卵黄タンパク質の生化学および分子生物学的知見の集積を目的として,各種染色を用いたMYPおよびYRPの性状比較,YRP-1 の一次構造解析とmRNA発現解析を行った。さらに,卵におけるMYPおよびYRPの定量を行い蓄積量の比較解析を行った。 まず,3種のYRP (YRP-1, 2, 3) とMYPとの生化学的特性を比較するために,キタムラサキウニ雌生殖巣から各種クロマトグラフィーを用いてYRP-1を精製した。続いて,キタムラサキウニ未受精卵より各種クロマトグラフィーを用いてYRP-2, 3を精製した。さらに,キタムラサキウニ雌生殖巣抽出物を用いて各種クロマトグラフィーを用いてMYPを精製した。得られたYRPおよびMYPの生化学的特性を各種染色により比較したところ,全てのYRPおよびMYPは糖染色および脂質染色に陽性であった。また,リン染色ではYRP-1,YRP-2,MYPに陽性反応が認められたが,YRP-3では認められなかった。これらの結果から,MYPおよびYRPは糖,脂質,リンを結合していることが明らかになった。 次に,YRPの合成部位および卵への蓄積経路を推定するために,YRP-1をコードするcDNA (mn-yrp1) の一次構造,各組織におけるmn-yrp1の発現分布および体腔液中におけるYRPの存在を明らかにした。キタムラサキウニ雌の生殖巣よりmn-yrp1の全長cDNAをクローニングしたところ,演繹アミノ酸配列は5,358 aa,推定分子量は609.6 kDaであった。他種のLLTPスーパーファミリーのタンパク質との系統樹解析により,YRP-1は他種のVtg,ApoBのホモログでありApoB様のタンパク質であることが明らかになった。以降,キタムラサキウニYRP-1はmn-ApoB-1と表記する。mn-apob-1の発現分布を組織間で比較したところ,mn-apob-1は雌雄ともに全ての器官において発現していた。また,定量PCR解析では卵黄形成期には雌の胃において発現量が高く,この時期のmn-ApoB-1の主要な合成部位は胃であることが明らかになった。また,雌の生殖巣におけるmn-apob-1発現量は配偶子形成の進行に伴い有意には変化せず,胃における発現量が卵黄形成期に上昇した後に卵成熟期に減少する傾向が見られた。さらに,体腔液中のApoBの存在を明らかにするために,濃縮した体腔液とエゾバフンウニApoB-1に対する特異抗血清を用いた二元免疫拡散解析を行った。その結果,1本の沈降線を形成した。以上の結果から,ウニApoB-1は消化管で合成され,体腔液を介して生殖巣に蓄積された後に卵母細胞に移行することが示唆された。 最後に,ウニ卵黄中においてMYPおよびApoBがどのようなタンパク質量比で蓄積されているのかを明らかにするために,キタムラサキウニMYPおよびApoB-1の定量系を確立した。精製したMYPおよびApoB-1を家兎に免疫注射することで特異抗血清 (a-mnMYP,a-mnApoB-1) を作製した。a-mnMYPおよびa-mnApoB-1の交差性はウェスタンブロット解析および二元免疫拡散解析により確認した。その結果,a-mnMYPはMYPを構成するタンパク質バンドに対して,a-mnApoB-1は,3種類のApoB (ApoB-1, 2, 3) に対して交差性を有することが示された。最後に,a-mnMYPおよびa-mnApoB-1を用いて,MYPおよびApoB-1のSingle radial immunodiffusion (SRID) 解析法によるタンパク定量系を確立し,卵抽出液中のApoB-1およびMYP量を測定した。その結果,総タンパク質に占めるApoB-1の割合は24.612 ± 1.559%,MYPの割合は23.163 ± 0.667%であった。ApoB-1とMYPが卵黄タンパク質中に占める割合の間に統計的な有意差はなかったが,ApoB-1が占める割合はMYPに比べて高い傾向を示した。 以上本研究では,キタムラサキウニ卵への栄養輸送に関わる3種のApoBの存在を明らかにし,その生化学的性状を明らかにした。これに加えて,最も主要なApoB-1の一次構造および主要な合成部位を明らかにするとともに,卵黄中のApoB-1およびMYPの量比を初めて明らかにした。これらのことから,ウニにおいてはMYPおよびApoBの2種類の卵黄タンパク質が卵への栄養輸送に関わっており,卵質の指標の一つである卵黄組成に深く関わるといえる。よって,MYPおよびApoBが適切な量比で卵黄中に蓄積されることがウニの正常な胚発生において不可欠であると考えられる。これらの知見は,水産重要種であるウニの卵質を卵黄タンパク質を用いて評価できる可能性を示しており,天然海域におけるウニの資源量の回復に貢献するものである。
Description: この博士論文全文の閲覧方法については、以下のサイトをご参照ください。
Description URI: https://www.lib.hokudai.ac.jp/dissertations/copy-guides/
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第15254号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 水産科学
Examination Committee Members: (主査) 教授 岸村 栄毅, 教授 都木 靖彰, 准教授 平松 尚志, 准教授 浦 和寛 (環境科学院)
Degree Affiliation: 水産科学院(海洋応用生命科学専攻)
Type: theses (doctoral - abstract of entire text)
URI: http://hdl.handle.net/2115/89898
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 水産科学院(Graduate School of Fisheries Sciences)
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