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Studies on genetic polymorphisms of host cell receptors affecting viral entry into cells

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k15522
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Title: Studies on genetic polymorphisms of host cell receptors affecting viral entry into cells
Other Titles: ウイルスの細胞侵入に影響を及ぼす宿主細胞受容体の遺伝子多型に関する研究
Authors: 服部, 貴成1 Browse this author
Authors(alt): Hattori, Takanari1
Issue Date: 23-Mar-2023
Publisher: Hokkaido University
Abstract:  近年、新型コロナウイルスやエボラウイルスなどによる新興感染症の発生が世界的に公衆衛生上の問題となっている。これらのウイルスは重篤な病態を引き起こす病原体として知られる一方で、無症状もしくは軽症で経過する症例も多く存在することが分かってきた。その要因の1つとして、宿主因子の遺伝子多型がウイルスへの感受性や重症度に関与している可能性が考えられている。ウイルスが宿主細胞に感染する際、ウイルス粒子は細胞膜上の受容体に結合し細胞内への侵入を開始する。よって、宿主受容体の遺伝子多型は、ウイルスの細胞侵入効率に影響を与えうると考えられる。本研究では、ウイルスの細胞侵入過程に影響を及ぼす宿主細胞受容体の一塩基変異(SNV)に着目した。  コロナウイルス(CoVs)科に属する重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)およびSARS-CoV-2はヒトに重篤な肺炎を引き起こすことが知られている。これらCoVsのスパイク蛋白質(S蛋白質)は、宿主細胞膜上のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を主要な受容体として細胞内に侵入する。これまでに、ACE2の29個のSNVがSARS-CoV-2のS蛋白質との結合親和性に影響を与えることが示唆されていた。しかし、これらのSNVが実際にSARS-CoVおよびSARS-CoV-2の細胞侵入効率に影響を与えるか否かは明らかになっていなかった。第一章では、ACE2のSNVがSARS-CoVおよびSARS-CoV-2の細胞侵入効率に与える影響をin vitroで解析した。これらのCoVsに対して低い感受性を示すHEK293T細胞に、ヒト由来の野生型ACE2または各SNV変異を導入したACE2遺伝子を一過性に発現させ、水疱性口内炎ウイルス(VSIV)のG蛋白質をS蛋白質に置換したシュードタイプウイルスに対する感受性を比較した。その結果、H505R変異体は両方のCoVsの感染性を有意に増強する事が示唆された。また、SARS-CoVの感染性は、G352VおよびY515C変異体によって増強、D355N変異体によって減弱することが示唆された。さらに、SARS-CoV-2の変異株(Alpha、Beta、GammaおよびDelta株)のS蛋白質について同様の解析を行ったところ、E35K変異体がBetaおよびGamma株の感染性のみ有意に低下させることが分かった。この結果は、SNVが与える影響はSARS-CoV-2の変異株間で僅かに異なることを示唆している。以上の結果より、ACE2のSNVがSARS-CoVおよびSARS-CoV-2に対する細胞感受性に影響を与える可能性が示された。  Human T-cell immunoglobulin mucin 1(hTIM-1)はウイルス吸着因子として様々なエンベロープウイルスの感染を増強することが知られている。hTIM-1のIgV domainに存在する3つのループ構造(BC、CC’およびFGループ)が、エボラウイルス(EBOV)のエンベロープ内に存在するホスファチジルセリン(PS)および表面糖蛋白質(GP)に結合することが分かっている。第二章では、これらのループ構造内に存在するSNV変異がフィロウイルスおよびアレナウイルスに対する細胞感受性に与える影響を解析した。まず、公共の遺伝子データベースでSNVの配列情報を検索し、3つのループ構造内にアミノ酸置換を伴う35か所のSNV変異を見出した。これら35個のSNV変異体を作出し、野生型hTIM-1または各SNV変異を導入したhTIM-1遺伝子をHEK293T細胞に一過性に発現させた。これらのhTIM-1発現細胞に、3種類のフィロウイルス(EBOV、マールブルグウイルス[MARV]、ヨビュウイルス[LLOV])および2種類のアレナウイルス(フニンウイルス[JUNV]、ラッサウイルス[LASV])のGPを持つシュードタイプVSIVを感染させ感受性を比較した。その結果、7個のSNV(L34P、C46W、W47R、C57S、H109P、N114SおよびD115G)はLASVを除く5種類のウイルスに共通してhTIM-1発現による感染増強を有意に減弱させることが分かった。また、I124T変異体はEBOV、MARV、LLOVおよびJUNVのGP、R110CおよびG111R変異体はEBOV、LLOVおよびJUNVのGP、V62I変異体はJUNVのGPをもつシュードタイプウイルスの感染性を減弱させた。以上の結果より、SNV変異体がウイルスの細胞侵入へ与える影響は、GPによって違いがあることが分かった。さらに、EBOVの感染性を有意に減弱すると考えられた各SNV変異を含む可溶性hTIM-1蛋白質を作出し、シュードタイプウイルスを用いて中和活性を解析した結果、野生型hTIM-1と比較して中和活性が有意に低下することが分かった。ウイルスの感染性を減弱させた11個のSNVのうち、5個のSNVのアミノ酸変異箇所はPS結合領域に位置し、6個のSNVの変異箇所はこの部位から離れた領域に位置していた。これらの結果から、hTIM-1分子の11カ所のSNV変異は、ウイルスエンベロープ上のPSおよびGPとの相互作用を低下させ、フィロウイルスおよびアレナウイルスに対する細胞感受性に影響を与える可能性が示唆された。  本論文により、宿主細胞受容体の遺伝子多型がウイルスの細胞侵入効率に影響を与えうることが示唆された。これらの新しい知見は、個体間レベルでのウイルスに対する感受性あるいは病態の違いに関与する宿主因子の解明に役立つと期待される。また、本研究の成果は新型コロナウイルスおよび出血熱ウイルスの細胞侵入機構および受容体分子との相互作用メカニズムの詳細な解明にも貢献することが期待される。今後、全ゲノム解析によるヒトの遺伝的多様性に関するデータの蓄積とともに、ウイルスへの感受性や重症化に関わる遺伝子多型の同定、地域または人種間の遺伝子多型の違いとウイルス感染症の流行状況との関連等についてさらなる研究が必要である。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第15522号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 感染症学
Examination Committee Members: (主査) 教授 澤 洋文, 教授 苅和 宏明, 教授 迫田 義博, 教授 髙田 礼人
Degree Affiliation: 国際感染症学院(感染症学専攻)
(Relation)haspart: Hattori T, Saito T, Okuya K, Takahashi Y, Miyamoto H, Kajihara M, Igarashi M, and Takada A. Human ACE2 genetic polymorphism affecting SARS-CoV and SARS-CoV-2 entry into cells. Microbiology Spectrum, 10(4), e0087022, 2022.
Hattori T, Saito T, Miyamoto H, Kajihara M, Igarashi M, and Takada A. Single nucleotide variants of the human TIM-1 IgV domain with reduced ability to promote viral entry into cells. Viruses, 14(10), 2124, 2022.
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/90005
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 国際感染症学院(Graduate School of Infectious Diseases)
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