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Feeding ecology of Hokkaido brown bears : region, age and sex differences in the consumption of high-energy foods revealed by hair stable isotope analysis

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k15114
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Title: Feeding ecology of Hokkaido brown bears : region, age and sex differences in the consumption of high-energy foods revealed by hair stable isotope analysis
Other Titles: ヒグマの採食生態 : 体毛安定同位体比分析で明らかとなった高エネルギー食物の利用における地域・年齢・性別による差異
Authors: 神保, 美渚1 Browse this author
Authors(alt): Jimbo, Mina1
Issue Date: 30-Jun-2022
Publisher: Hokkaido University
Abstract:  これまで、特にヒグマのような大型哺乳類の食性研究では、個体群や集団レベルでの平均的な食性調査が主流であった。しかし、安定同位体比分析などの個体レベルでの食性解析技術が発展したことにより、多くの動物種において採食生態の個体間変異が発見されるようになった。個体間変異は一般的に、食物資源や環境など外的要因に基づくもの、性別や年齢など個体の内的要因に基づくもの、そしてそれらでは説明できないものに分けられる。個体の食物選択は、行動、生存、繁殖を通して個体群動態や生態系に関わる。そのため、個体間変異をもたらす要因と影響を理解することは生態学的に重要な課題である。  第2章では、体毛の安定同位体比分析を生態学的研究に応用するために、飼育および野生ヒグマの体毛伸長様式(伸長速度、伸長期間、換毛期間、毛球の構造変化など)を調べた。ガードヘア(保護毛)は、飼育個体で4月下旬から10月上旬にかけて、野生個体で5月下旬から9月下旬にかけて伸長することが観察された。また、換毛は8月から9月末の間に完了した。毛球の形状は白球型(White sphere: WSタイプ)、黒鉤型(Black hook: BHタイプ)、白鉤型(White hook: WHタイプ)の3種類に分類された。毛球の形状は、採取した前年に伸長した古い体毛(WSタイプ)と採取したその年に新しく伸長した体毛(BHタイプ、WHタイプ)を識別するために利用できることが明らかとなった。  第3章では、知床半島に生息するヒグマの食性の個体間変異を調査し、食性の変異をもたらす要因について検討した。特に、母親から独立した後の採食経験が食物選択に及ぼす影響に注目した。知床半島で2010年から2020年の間に捕獲されたヒグマ(n = 295)から採取したガードヘアの安定同位体比分析によって、個体レベルで食性を推定した。また、捕獲時点の食性と出生地の平均的な食性を比較することで、ヒグマの食性が成長に伴ってどの程度変化したのかを定量的に評価した。その結果、ヒグマの食性は個体群内において地域、性別、年齢によって変化していることが明らかになった。雄雌ともに、年齢と食性に占める海産動物の寄与率には正の相関が見られた。また、メスは生涯に渡って出生地の平均的な食性を維持していたが、オスの食性は母親から独立して6年以上が経過し、身体的に成熟した段階で大きく変化していた。このような後半生における食性変化は、生息地の探索、採食経験の獲得、社会的優位性など、いくつかの要因によるものであると考えられた。本研究は、単独性の大型哺乳類において、独立後の採食経験がその後の食物選択を左右することを示唆する初めての証拠となる。  第4章では、ヒグマの食性の地域差が、人とヒグマの軋轢問題とどのように関連しているのかを明らかにした。2019年および2020年に知床半島全域(斜里町、羅臼町、標津町)に立木型ヘアトラップを設置し、ヒグマの体毛を非侵襲的に採取した。食性の地域差を明確にするため、行動圏が小さく、母親から独立した3歳以上のメスを解析対象とした。また、ヘアトラップによって体毛が採取された個体(以下、トラップ個体)と有害駆除・狩猟・学術研究のための捕獲によって体毛が採取された個体(以下、捕獲個体)の食性を国立公園、斜里町、羅臼町のそれぞれで比較した。サケマス遡上河川の多くが市街地に囲まれた斜里町では、人前にくり返し出没する個体のほうが林内に留まる個体よりも多くのサケマスを消費しているのではないかと予想したが、トラップ個体と捕獲個体の食性に差異は認められなかった。このことは、有害駆除された個体であっても、少なくとも捕殺の前年までは林内の個体と変わらない食物を利用していたことを示しており、斜里町でヒグマが人里に出没するのは必ずしも高エネルギーな食物を獲得するためではないことを示唆している。羅臼町では、捕獲個体のほうがトラップ個体よりも高山植物(主にハイマツ球果)に強く依存していることが示唆された。これらの個体は、春から夏にかけて草本やサクラの実をバランスよく利用する個体に比べて、ハイマツ球果の資源量変動に敏感である可能性がある。知床半島に生息するヒグマにとって、ハイマツ球果はサケマスに代わる高エネルギー食物であると考えられるが、ハイマツ球果の資源不足が一部のメスヒグマにとっては人里に出没するトリガーとなり得ることが示唆された。標津町のメスヒグマでは、サケマスやハイマツ球果の利用は少なく、その他の植物の利用が多かった。そのため、標津町でのヒグマと人の軋轢に関わる食物状況を検証するためには、サクラやミズナラなどの結実を考慮すべきである。また、今回の分析では、デントコーンを2年以上に渡って利用していた個体や、デントコーンを利用しながらも捕獲されていない個体は検出されなかった。  本研究では、体毛安定同位体比分析を用いた個体レベルでの食性解析によって、ヒグマの採食生態の個体間変異が生じる要因を明らかにした。羅臼町で示された捕獲個体とトラップ個体の食性差異は、個々の採食生態が人との軋轢に関連することを示唆する。一方、斜里町では捕獲個体とトラップ個体の食性に差異は示されず、採食生態という点ではどのメスも人里に出没する可能性があることが示唆された。この場合、森林に生息するクマが偶発的にでも人里に現れるリスクを減らすような環境づくりが重要である。人慣れ、食物不足、農作物依存は全く異なる軋轢のシナリオであり、地域の環境、軋轢の状況、クマの採食生態の個体差などを考慮し、適切なモニタリングシステムを構築することが重要である。本研究の成果は、野生ヒグマの生態理解を深め、ヒグマの保護管理に新たな視点を提供するものである。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第15114号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 獣医学
Examination Committee Members: (主査) 教授 石塚 真由美, 教授 坪田 敏男, 教授 山﨑 晃司 (東京農業大学), 准教授 下鶴 倫人
Degree Affiliation: 獣医学院(獣医学専攻)
(Relation)haspart: Mina Jimbo, Naoya Matsumoto, Hideyuki Sakamoto, Yojiro Yanagawa, Yoshiko Torii, Masami Yamanaka, Tsuyoshi Ishinazaka, Yuri Shirane, Mariko Sashika, Toshio Tsubota, Michito Shimozuru "Hair Growth in Brown Bears and Its Application to Ecological Studies on Wild Bears," Mammal Study, 45(4), 337-345, (13 October 2020)
Jimbo, Mina, Ishinazaka, Tsuyoshi, Shirane, Yuri, Umemura, Yoshihiro, Yamanaka, Masami, Uno, Hiroyuki, Sashika, Mariko, Tsubota, Toshio, and Shimozuru, Michito. 2022. “ Diet Selection and Asocial Learning: Natal Habitat Influence on Lifelong Foraging Strategies in Solitary Large Mammals.” Ecosphere 13(7): e4105.
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/90172
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OAI-PMH ( junii2 , jpcoar_1.0 )

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