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乳癌における腫瘍関連MUC1の発現とその臨床的有用性に関する研究

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k13445
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Title: 乳癌における腫瘍関連MUC1の発現とその臨床的有用性に関する研究
Other Titles: Studies on tumor-associated MUC1 expression and its clinical utility in breast cancer
Authors: 清水, 亜衣 Browse this author
Issue Date: 25-Mar-2019
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 【背景と目的】MUC1は,種々の腺上皮細胞のapical cell surfaceを被い,種々の生理活性を果たす高分子の粘液性膜貫通型タンパク質で,全腫瘍の50%以上に発現するといわれる.腫瘍組織におけるMUC1発現は,細胞の増殖,形質転換,接着,浸潤,免疫細胞の応答性および治療抵抗性などに関連するとされ,MCU1の発現量と患者の予後に相関性があることが知られる.腫瘍細胞が発現するMUC1(tumor-associated MUC1;TA-MUC1)は,細胞内分布と化学構造の両方が,正常細胞のMUC1と異なるとされる.正常細胞ではMUC1がapical cell surfaceにみられるのに対し,腫瘍細胞のTA-MUC1は細胞膜全周ないしは細胞質へ局在が変化するという.MUC1コアタンパク質上の糖鎖構造はTA-MUC1においては異常に短く,その結果生じるTn抗原,STn抗原などは癌関連糖鎖と呼ばれる.つまりMUC1とTA-MUC1の化学構造の差異とは,糖ペプチド構造の異同といえる.乳癌ではその90%以上にMUC1が発現し,再発・転移を検出する血中腫瘍マーカー(CA15-3)としてMUC1測定が診療上,広く使用されている.対照的に,乳腺腫瘍の病理診断において良悪鑑別のためにMUC1が利用されることはほとんどない.これは通常のMUC1抗体がMUC1とTA-MUC1の糖ペプチド構造の差異を識別できず,免疫組織化学染色によるTA-MUC1の特異的検出が困難なためと考えられる.このような背景の中,TA-MUC1の代表的な分子のひとつであるTn抗原を有するMUC1(以後Tn-MUC1)のみを認識エピトープとする,Tn-MUC1抗体(SN102)が開発された.本研究は同抗体に着目し,認識されるTn-MUC1の病理組織学的診断マーカーとしての有用性,乳癌の発生進展過程におけるTn-MUC1の発現動態や臨床的意義を明らかにすることを目的として行った.更に治療への応用の可能性を知るため,同抗体による抗体療法の実施可能性を検討した. 【対象と方法】Tn-MUC1抗体(SN102)とともに,比較対照として既存のMUC1抗体(Ma552)を用いて免疫組織化学解析を行った.対象症例として,2000~2003年に北海道大学病院で外科的切除検体にて浸潤性乳癌(術前治療未施行)と診断され,薬物療法などの術前治療未施行な174例より,浸潤癌と非腫瘍の代表部からなる組織マイクロアレイ(TMA)を作製した.またMulti-lesion解析では,2015~2016年の北海道大学病院の切除乳癌症例から,同一病理切片内に非腫瘍,前癌病変(FEA),非浸潤癌(DCIS),浸潤性乳管癌(IDC)を含むと判断した26例のwhole sectionを用いた.免疫組織化学染色の評価にはHスコア法を用いた.光学顕微鏡下にて染色強度をスコア0(陰性),スコア1(弱陽性),スコア2(強陽性)の3段階にスコア化し,各強度の腫瘍細胞全体に占める占有率(%)を乗算した和(スコア0×a%+スコア1×b%+スコア2×c%)を総スコア(Hスコア)として用いた.TMA解析では,Tn-MUC1とMUCの発現状態,細胞内局在,臨床病理学的因子および予後との関連を検討した.Multi-lesion解析では,非腫瘍-FEA-DCIS-IDC移行におけるTn-MUC1発現状態と細胞内局在の変化を評価した.更にヌードマウスへ乳癌細胞株MDA-MB-231を移植した担癌動物モデルを用い,Tn-MUC1抗体(SN102)の抗腫瘍効果を検討した. 【結果】TMAを用いた免疫組織化学的手法によるArea of under curve(AUC)値は,Tn-MUC1の全陽性反応(細胞質と細胞膜の反応)と細胞質陽性反応を対象とした評価結果で最も高く(いずれもAUC=0.95)精度の高さが確認された.ROC曲線から得られた至適カットオフ値の特異度は,MUC1が45.6であるのに対しTn-MUC1は97.5と高値であった.Whole sectionを用いたmulti-lesion解析により,Tn-MUC1の細胞質におけるHスコアは,非腫瘍-FEA-DCIS-IDCの各段階を追って漸増した(Hスコア平均値;非腫瘍12.1,FEA 58.4,DCIS 94.8,IDC 102.4).これらの検討の中でTn-MUC1は,FEAやDCISでは細胞膜と細胞質に,IDCでは細胞質に発現していた.臨床病理学的因子との関連性の検討により,Tn-MUC1陽性は,ホルモン受容体陽性/HER2陰性/低増殖能タイプでは予後良好な傾向を示し,高増殖能の乳癌において有意な予後不良因子であった(OS;p=0.0020,DFS;p=0.0436).ヒト乳癌細胞株を移植した担癌マウスモデルにおいて,Tn-MUC1抗体(SN102)の投与による部分的な腫瘍増殖抑制効果が観察された. 【考察】Tn-MUC1抗体の乳癌に対する特異性は高く,診断マーカーとしての有用性が明らかとなった.Tn-MUC1抗体による陽性反応が現在推定されている乳癌発生過程の早期から出現することから,Tn-MUC1抗体が乳癌の発生過程におけるTAMUC1発現の意義を解析するためにも,前癌病変の病理組織学的鑑別の補助診断ツールとしても,有用な抗体であることが示された.更にTn-MUC1が,現在推定されている乳癌発生過程の早期では細胞膜と細胞質に発現し,浸潤癌の段階では細胞質に蓄積する現象が明らかとなった.臨床病理学的因子との検討により,乳癌はTn-MUC1発現意義が異なるヘテロな集団である可能性が示唆された.更にTn-MUC1の治療標的としての有用性,Tn-MUC1抗体を用いた治療応用の可能性が示された. 【結論】本研究は,Tn-MUC1抗体(SN102)が,TA-MUC1のひとつであるTn-MUC1の局在変化や性質を評価する上で有用なツールであることを明らかにした.同抗体により認識されるTn-MUC1が,乳癌の診断や治療への有用性が期待される有望な分子であることを示した.加えて,これまで難しいとされてきた組織細胞検体でのMUC1上の糖鎖構造変化が可視化できることを初めて示した.MUC1の質的量的変化を観察することが,乳癌の発生進展過程の本態の解明に寄与する可能性が示唆された.
Description: 配架番号:2459
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第13445号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 医学
Examination Committee Members: (主査) 教授 田中 伸哉, 教授 園下 将大, 教授 近藤 亨, 准教授 鬼丸 力也
Degree Affiliation: 医学研究科(医学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/91679
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 医学院(Graduate School of Medicine)
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