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看護師の離職リスクの予測における職業性疲労・回復尺度と唾液cortisolの有用性

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k15829
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Title: 看護師の離職リスクの予測における職業性疲労・回復尺度と唾液cortisolの有用性
Authors: 山口, 真弥 Browse this author
Issue Date: 25-Mar-2024
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 【背景】 看護師の離職は人員不足を招き,各看護師の労働負担や患者の安全性に影響を及ぼす国際的課題である.この課題に対処するためには,離職リスクの十分な予測に基づいて,高リスク者に早期介入できる体制が不可欠である.看護師の離職の関連要因のうち,慢性疲労は強固な予測因子として報告されている.したがって,慢性疲労の十分な評価が欠かせない.一方で,現行の主観的指標は,交代制勤務者にとって重要な疲労回復の視点が無く,慢性疲労を十分に把握できているとは言えない.また,疲労の多次元性を考慮すると,信頼性のある客観的指標を併用する必要があるが,看護師に適用可能な簡便な客観的指標は未だ明らかになっていない.そこで本研究では,より精度の高い離職リスク予測の実現に向け,看護師の離職リスクの予測における職業性疲労・回復尺度と唾液cortisolの有用性を検証した. 【交代制勤務看護師の慢性疲労に関連する唾液マーカープロファイルの探索】 交代制勤務看護師の慢性疲労に関連する唾液マーカープロファイルを探索した.20-30 代の女性看護師45名を対象とし,1ヶ月間の 4回の勤務開始前(日勤・夜勤各2回)に唾液を収集した.唾液cortisol,免疫グロブリン A(s-IgA)および oxytocin 濃度は,酵素結合免疫吸着測定法によって測定した.初回勤務(夜勤)において,蓄積的疲労兆候インデックスにより慢性疲労を評価した.その結果,階層型クラスター分析により,cortisolに関しては,2回の日勤を通して1)低濃度グループと 2)高濃度グループが特定された.慢性疲労度は低濃度グループの方が有意に高かった.s-IgAについては4回の勤務を通して1)低濃度グループと2)高濃度グループが特定され,慢性疲労度は高濃度グループの方が有意に高かった.以上より,看護師の慢性疲労に関連する唾液バイオマーカーのプロファイルは,1)cortisol:2 回の日勤を通して低濃度,2)s-IgA:4回の勤務を通して高濃度であることが示唆された. 【日本語版職業性疲労・回復尺度(OFER-J)の信頼性と妥当性の検証】 OFERは回答負担が少なく(15項目),労働者の慢性・急性疲労に加え,交代制勤務によって脅かされやすい勤務間回復を同時に測定できる世界で唯一の尺度である.日本の交代制勤務看護師942 名を対象に,OFER-Jの信頼性と妥当性を検証した.6病院(55病棟)を対象に自記式質問票を用いた横断的調査を行った.その結果,OFER-J の 3因子モデルに対する適合度は許容されるものであり,その他の妥当性は良好であった.また,内的一貫性は十分であり,安定的な状態である慢性疲労のみ,再テスト信頼性は良好であった.以上より,OFER-J は交代制勤務看護師において,十分な信頼性と妥当性を持つ尺度であることが明らかになった.その簡便性の高さから,OFER-J は疲労と回復のモニタリングに活用でき,交代制勤務看護師の慢性疲労の兆候を把握するための有用な尺度であると考えられた. 【3交代制と2交代制に従事する看護職者の慢性疲労と回復】 3交代制(n = 359)および2交代制(n = 448)に従事する看護師における回復と疲労の特徴,およびこれらの関連要因を検証した.OFER-J の信頼性と妥当性を検証した調査データの 2次分析を行い,疲労と回復はOFER-Jにより評価した.その結果,3交代制の勤務間回復度は 2交代制よりも有意に低かった.いずれの勤務体制においても,残業時間と質の低い睡眠は,勤務間回復を妨げ慢性疲労を強める要因であった.3 交代制では,子どもを持つ者や余暇に活動的である(活動志向)ことが,良好な勤務間回復と慢性疲労の抑制に関連していた.2 交代制では,活動志向は低度の慢性疲労に関連していた.勤務体制と年齢の交互作用から,40 歳以上の看護師は2交代制において慢性疲労リスクが高まることが示された.以上より,両勤務体制では,看護師が質の高い睡眠や家族役割,余暇活動を維持することを念頭に,残業時間に注意を払う必要がある.また,看護師の年齢を考慮した勤務体制の選択・編成は,重度の慢性疲労の予防に有効である可能性が示された. 【看護師の離職リスクの予測における唾液cortisolプロファイルの有用性】 以上の研究をもとに,唾液 cortisol プロファイルが交代制勤務看護師の離職リスクの予測因子となるかどうかを検証し,その有用性を検討した.本縦断的研究では,大学病院において2交代制勤務に従事する20-40代の女性看護師40名を対象とし,3ヶ月の調査を行った.研究参加時に慢性疲労(OFER-J)およびバーンアウト(日本語版バーンアウト尺度)を評価した.唾液cortisol は,1 ヶ月目の 3 回の日勤日(起床時)において,point-of-care デバイス(SOMA CUBE Reader)で測定した.Cortisol プロファイルは,3 回の測定値の平均値とした.3ヶ月後の離職リスクとして,就業継続困難感(0:全く感じない-10:この上なく感じる)を評価した.その結果,cortisol プロファイルは就業継続困難感と関連し,この関連は共変量を調整しても一貫していた.慢性疲労,バーンアウト,看護師経験年数による重回帰モデルでは,就業継続困難感の予測性は限定的であった(R2 = 0.42).このモデルに cortisol プロファイルを追加したところ,cortisolプロファイルの関連は有意であり,モデルの予測性は向上した(ΔR2 = 0.11).以上の結果より,1ヶ月間の日勤3回において得られた唾液cortisolプロファイルは,交代制勤務看護師の就業継続困難感の予測因子であり,OFER-J との併用により,離職リスクの予測性向上に寄与する可能性が示された. 【結論】 OFER-Jと唾液cortisolプロファイルは離職リスクの独立した予測因子であることが示された.回答負担が少ないOFER-Jは,定点測定に加えて連続的なモニタリングに活用できる.また,唾液cortisol は,point-of-care デバイスにより看護師自身で簡便に測定できるため,セルフモニタリング指標となる.したがって,労働場面では,OFER-Jによるサーベイランスと 1ヶ月間の3回の日勤における唾液 cortisol の測定によって,離職リスクを捉えることが可能であると示唆された.これらを併用する利点はスクリーニング感度の向上であり,OFER-J 単独では限定的な予測性を唾液cortisolプロファイルが補完し,その逆も同様である.以上のことから,OFER-Jと唾液cortisol プロファイルは,看護師の離職リスクの予測において有用な指標であり,高リスク者に対する早期対策や看護管理者の面談を通した離職リスクの原因特定を支援する有用なツールになり得ると考えられた.
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第15829号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 看護学
Examination Committee Members: (主査) 教授 石津 明洋, 教授 矢野 理香, 教授 伊藤 陽一 (北海道大学病院 医療・ヘルスサイエンス研究開発機構 データサイエンスセンター)
Degree Affiliation: 保健科学院(保健科学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/91952
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 保健科学院(Graduate School of Health Sciences)
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