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急性期脳梗塞医療体制の最適配置と地理的アクセス性に関する研究

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.r7210
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Title: 急性期脳梗塞医療体制の最適配置と地理的アクセス性に関する研究
Authors: 大橋, 和貴 Browse this author
Issue Date: 28-Jun-2024
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 近年の脳卒中治療の進歩は、医療提供体制の地域格差と解消に向けた均てん化の課題を浮き彫りにした。専門性の高い治療の実施は、CTやMRIなどの医療機器を有する救急病院や専門病院、専門医による治療に依存するため、医療資源の豊富な都市部とそれ以外の地域で格差が生じやすい。このような医療資源の偏在や医療アクセスの格差は世界各国における課題であり、日本を含む多くの国々が医療政策として目標を設定し、格差是正に取り組んでいる。2018年に成立した脳卒中・循環器病対策基本法によって脳梗塞を含む脳卒中医療体制の全国的な均てん化が進められてきた。それでもなお、脳卒中は日本人の死因として4番目(2021)に多く、要介護4や5と認定される要因の第1位である。脳卒中は社会的な影響の大きな疾患であり、継続的な対策とその評価が求められる。脳卒中の中でも脳梗塞が約6割を占め、2021年の脳梗塞による死者数は約6万人であった。急性期の脳梗塞治療は、時間的な制約を伴い、かつ発症から再灌流までの時間が転帰に影響する。つまり、専門性と時間依存性の特徴をもつ急性期の脳梗塞治療は、適切な場所で適切な時間に実施されることが望ましいものの、過疎地域や医療資源の不足する地域では、困難な現状にある。ただし、このような医療体制の地域格差がもたらす影響は十分に評価されていない。 そこで、本研究は医療資源の偏在に起因する医療アクセスの地域格差に着目し、住民の立場から見た地理的アクセス性と医療者の立場から見た医療の混雑度を定量化し、地理的な傾向を可視化した。また。地理的アクセス性や医療の混雑度と地域の健康指標との関連の実証を試みた。最後に、公平な医療アクセスの実現に向けた医師の最適配置案を提示した。 第1章では序論として、脳卒中の疫学や医療提供体制、急性期脳梗塞の治療法、医療アクセスの評価方法や理論的背景を解説した。また、本研究で用いる地理情報システムおよび保健医療分野における活用について概観し、本研究における課題を明確にした。 第2章では、日本の都道府県で最も人口密度が低い北海道に焦点を当て、急性期脳梗塞医療への地理的アクセス性がもたらす影響を明らかにすることを目的に、一次脳卒中センターまでの距離と脳梗塞の標準化死亡比を用いて条件付き自己回帰モデルによる時空間分析を行った。本結果により、一次脳卒中センターまでの距離が遠い市区町村で脳梗塞の死亡リスクが高いことを示した。また、人口10000人あたりの救急告示病院が少ないことや学士以上の学位を持つ人口割合が低いことが高い脳梗塞死亡リスクと関連することを示した。加えて、北海道では2010年から2020年において脳梗塞死亡リスクが一貫して低下したことを示した。 第3章では、日本脳神経血管内治療学会が認定する脳血管内治療専門医が在籍する一次脳卒中センターを血管内治療提供可能施設として定義し、日本全体の血管内治療の人口カバー率を示した。さらに、各施設の潜在的混雑度を算出し、各都道府県の潜在的混雑度と脳梗塞の標準化死亡比を用いて、脳梗塞死亡リスクとの関連を空間計量経済学の手法により分析した。その結果、男性では潜在的混雑度と脳梗塞死亡リスクとの間に正の有意な関連を示した。一方で、女性では有意な関連を認めなかった。 第4章では、日本の市区町村を対象に、血管内治療の地理的アクセス性を可視化し、脳梗塞死亡リスクとの関連を明らかにするために、定量化した地理的アクセス性の指標を投入した条件付き自己回帰モデルによる空間分析を行った。その結果、地理的アクセス性のみを含めた分析では、地理的アクセス性が悪い地域で脳梗塞死亡リスクが高かった。しかし、市区町村の社会経済的因子(産業人口割合や学士以上の学位を持つ人口割合)を含めた分析では、地理的アクセス性との有意な関連を認めなかった。この結果、脳梗塞医療の地理的アクセス性の向上のみならず、住民が従事する産業や教育歴など社会経済的因子を考慮した医療政策の重要性が示唆された。 第5章では、第3章で用いた潜在的混雑度を医師の労働負荷として捉え、地理的アクセス性および医師の労働負荷の格差是正を目的に、二次計画法を用いて最適配置シミュレーションを行った。その結果、各施設の潜在的混雑度は平準化し、平均値から離れた値を持つ施設は平均値に近づいた。都道府県単位で医師の流出入を可視化すると、東京都や大阪府は医師が流出する上位の都道府県であったが、千葉県や埼玉県は医師が流入する結果となった。したがって、東京都や大阪府といった大都市の医師の偏在はあるものの、地理的アクセス性および労働負荷の是正には、都市から地方への大きな移動よりも都市から都市郊外への医師の移動が必要である可能性が示唆された。 第6章では、第2章から第5章までの内容を総括した。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 乙第7210号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 保健科学
Examination Committee Members: (主査) 教授 田髙 悦子, 教授 小笠原 克彦, 教授 藤村 幹 (大学院医学研究院), 准教授 藤原 健祐 (小樽商科大学)
Degree Affiliation: 保健科学院
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/92744
Appears in Collections:学位論文 (Theses) > 博士 (保健科学)
論文博士 (Doctorate by way of Dissertation) > 保健科学院(Graduate School of Health Sciences)

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