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アメリカ会計基準の研究

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.11501/3159807

Title: アメリカ会計基準の研究
Authors: 米山, 祐司 Browse this author
Issue Date: 30-Sep-1999
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 本論文は,現代における会計基準設定構造の研究である。現在,一国内における個々の会計基準の設定や改訂ばかりでなくどのようなディスクロージャー制度を構築するかも,開示情報に対する社会的要望と国際的関係の両面を考慮することが求められている。企業が開示する情報は社会の幅広い経済活動の上で必要不可欠なものとなっており,企業を取巻く多くの人々の意思決定に重要な指針を提供している。それゆえ,企業活動や経済環境の変化は新たな情報の開示あるいは既存の開示情報の修正を要求する圧力を生み出している。一方,連結財務諸表中心のディスクロージャー制度への転換や時価主義会計の導入の検討など,国際会計基準等の動向を勘案しながら現在わが国で「金融システム改革」の一環として行われている会計制度の抜本的見直しにみられるように,各国の会計情報及び会計制度も国際的な枠組みのもとで考えざるを得ない状況となってきている。本論文はこのような会計基準及び会計制度の現代的特質を多くの議会等の原始資料を用いながら解明してきている。本論文は国際会計と財務会計の研究である。本論文は二部構成となっており,第一部でアメリカにおける会計基準設定過程を,第二部で会計の国際的調和化の動向とアメリカの関わりを多面的に分析している。第一部の第1 章では,会計基準設定の過程とその時代的背景を会計基準設定構造としてとらえ,アメリカにおけるセグメント情報基準の設定構造を分析している。アメリカにおけるセグメント情報は,今世紀初頭からの長い連結財務諸表制度の経験を土壌に,1960 年代から1970年代にかけての強い時代的及び社会的要望を具現するものとして誕生している。すなわち,セグメント情報は,1960 年代後半にピークを迎えるアメリカの合併運動で登場したコングロマリット合併に対する反トラスト規制の観点からアメリカ議会で連結財務諸表情報の改善として要請されるようになり,その後SEC 及びFASB により会計基準として制度化されてゆく。本章では連結財務諸表情報自体が時代的要請により実務と基準の整備により定着してきた歴史的経緯を押さえ,そのうえで企業活動と経済的環境の変化に応じるために新たな会計情報としてセグメント情報が要求されることになった点を,議会,政府機関,産業界,会計団体等の利害関係者団体のセグメント情報に対する意向を分析することで明確にしている。さらに,会計基準設定が社会に対して大きな影響を及ぼすがゆえに,その設定過程が政治的色彩を帯びてくる傾向があり,そのため設定過程において広く社会的合意を得る仕組を完成する必要があった経緯を会計基準設定機関の変遷を通して明らかにしている。第2 章においては,外貨表示財務諸表換算会計の基準改訂を対象としている。現在の変動相場制の下においては国外子会社を含めて連結財務諸表を作成する際に用いる換算方法により企業業績が大きく変動することになる。これは企業の海外事業戦略と密接に関連するゆえに,一度設定された会計基準もそれに準拠して作成,開示される情報が企業の海外事業活動の実態を適正に表していないと判断した産業界からの強い圧力を受けて再編されてゆかざるを得なかった。この再編過程を,アメリカにおける経済環境及び企業の海外事業戦略の変化と新旧各基準の論理構造を対応させて分析している。この会計基準の再編は会計基準設定機関であるFASB の権威を脅かし,その存続のためには外貨表示財務諸表換算に対する産業界の要望を取り込みながら,その会計基準の論理構造を再構築する必要があったのである。第二部では,会計の国際的調和化の動向に深く関わるSEC の証券規制政策の転換の意味と影響を分析し,SEC が模索した新しい開示制度の試みを検討している。さらに現在の会計基準が国際的枠組みのもとでいかに設定されているのかを,具体的に日本,アメリカ及びIASC での実例をもって分析している。1980 年代も後半になると,アメリカをはじめ世界の会計基準の設定環境に大きな変化がみられる。すなわち,国際的な企業活動及び投資活動の展開により一国の内だけで開示制度を考えることができなくなり,国ごとに大きく異なる会計基準および開示規定の国際的調和が図られる必要が生じてきたのである。第3章では,SEC が国際的配慮を重視する証券規制政策をアメリカの国内及び国外で展開することになった背景を探り,その具体的な政策の内容を広く検討している。SEC はアメリカの証券市場の相対的な地位の低下のために証券規制政策を国際的な領域まで拡大してアメリカ市場の活性化を図ろうとしたが,その基本方針は常にアメリカの投資者保護にある。そのため,良質なディスクロージャーを提供するという姿勢は現在まで一貫して維持されてきており,そこには安易な妥協はみられない。IAS の改訂プロジェクトがほぼ終了した現在,IOSCO がコア・スタンダードを承認しIAS が多国間証券公募で用いられるようになるか世界の注目を集めているが,そこではSEC によるIAS 受け入れの決断が大きく影響すると考えられている。本章での分析により,SEC はこれまで国外の企業に対する種々の規制緩和を行いながらも自国基準以外の受け入れには厳しい条件を付けてきていることがわかる。本章では,このようなSEC の証券規制政策における基本方針を明らかにすることで,会計の国際的調和化の現在と将来を考える際の重要な指針を提供している。アメリカはカナダの間で互いの開示書類を相互承認する多法域間開示制度を1991 年に導入した。SEC は国際的に健全な開示制度を築くために,二国間あるいは複数国間での開示制度の相互承認と国際的に統一された会計基準設定のふたつの方向の可能性を探ってきたが,MJDS はこのうちの前者の試みである。この制度のもとでは相手国での証券発行において一定の要件を満たすならば自国での開示書類が受け入れられることになる。アメリカにとっては外国企業の証券発行が促進されることで証券市場が活性化することが期待されていたのである。第4章では,この制度の詳細な検証を行い,SEC のディスクロージャー政策の基本姿勢を再度確認し,同時に会計の国際的調和化の方向のひとつとして考えられていた相互承認方式が持つ限界を指摘している。すなわち,かなり会計基準が共通するとみられていたカナダの間でもその差異の存在により全面的な開示書類の受け入れには至っておらず,たとえIAS をミニマム・スタンダードとしても相互承認方式では現在の会計実務の多様性を削減することには繋がらないとされるのである。第5 章では,セグメント情報の国際的調和の動向を検討している。現在会計基準設定は国際的な動向を無視したり,他国との協調を図らずに国内での会計基準設定を進めることは難しくなってきているところに時代的特質がある。わが国の場合は,連結財務諸表情報を国際的レベルにすることを目的に,当初からアメリカの基準を目標にセグメント情報の導入と制度的完成が図られてきた。アメリカではカナダとの間で共同プロジェクトの形で共通の基準改訂を行っている。IASC の基準改訂はIOSCO との合意にもとづくIAS 設定・改訂のプロジェクトの一環であり,最終的な基準の承認にあたってはアメリカとカナダのプロジェクトの内容に歩み寄る姿勢をみせている。しかし,国際的な差異を解消することには困難が伴い,現在でも完全な調和化は達成されていない。本章ではその状況がどこに起因するかを明らかにし,基準設定にあたっては国際的な動向との調整を図りながらも情報開示の目的を明確にすることの必要性を指摘している。以上,本論文では現代の会計基準と会計制度の特質をアメリカを主たる対象としながら幅広く検討している。現代の会計情報は,社会の会計情報に対する要望を取り入れる仕組みをその設定機構の中に持つ必要があり,同時に国際的調和への配慮も求められてきている。会計情報及び会計制度を取り巻く状況が国際的に大きな変革期を迎えている現在,その時代的特質を把握することは重要であると考える。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 乙第5512号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 経営学
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/28092
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Submitter: 米山 祐司

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