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ワイドスクリーン過渡期における“窃視”の考察 : 川島雄三『雁の寺』を中心に

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/rjgsl.17.l247

Title: ワイドスクリーン過渡期における“窃視”の考察 : 川島雄三『雁の寺』を中心に
Other Titles: Consideration of “Voyeurism” in the widescreen transition period : Focusing on Yuzo Kawashimaʼs “Temple of Wild Geese”
Authors: 黄, 也1 Browse this author
Authors(alt): Huang, Ye1
Issue Date: 29-Nov-2017
Publisher: 北海道大学文学研究科
Journal Title: 研究論集
Journal Title(alt): Research Journal of Graduate Students of Letters
Volume: 17
Start Page: 247(左)
End Page: 262(左)
Abstract: 六十年代にテレビが覇権的なメディアになったことによって,斜陽化していた映画産業は前代未聞の瀕死状態に直面した。その対策として,スタンダード・サイズから,幅が二倍ちかくに拡大するワイドスクリーンが導入された。ワイドスクリーンは単なる技術的な変化だけではなく,映像的美学にも根本的な影響を及ぼしている。 本稿はその過渡期の作品,川島雄三監督の『雁の寺』を研究対象として取り上げたい。なぜなら,『雁の寺』は,ワイドスクリーンによる映画の表現様式の変化と,川島自身の演出の変容が二重化したかたちで現れているからである。 具体的には,『雁の寺』における二つ水準の“窃視”をめぐって考察していきたい。まず,女性主人公の露出した身体が例外なく,一方的に男性主人公の視線に曝されてしまうという,物語の水準における分析を行う。そして,ワイドスクリーンの映画それ自体を“窃視”のメカニズムとして考察したい。それらによって,『雁の寺』における窃視の異質性を明らかにする。 一方で,物語世界と関係なく,別種の窃視が『雁の寺』には存在する。具体的には,ありとあらゆる物を利用して作られたフレーム=覗き穴を通して,決して心理主義的な説明や,権力関係の象徴的意味に還元されない,極端なカメラ・ポジション=非人称的な視点によって,強度に満ちた画面をわれわれ観客に絶えず提示している。本稿では,それを第二の水準の“窃視”と見做す。 物語の構造から逸脱し,それ自体の自律性を持つ画面の強度と,同一化や感情移入ではなく,観客に視覚に快楽や刺激を与える驚きの美学は,ワイドスクリーン時代の到来による川島映画の構図の変化と連動し,また,初期映画における「アトラクションの映画」にも共通している特徴である。以上の二つの水準の“窃視”がお互いにせめぎ合いながら共存している。『雁の寺』は,そういう関係性のなかで生まれた産物の以外の何ものでもないのだ。
Type: bulletin (article)
URI: http://hdl.handle.net/2115/67994
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