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鉛入り積層ゴムの熱・力学的連成挙動を考慮した免震建築物の応答評価に関する研究

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Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k15625
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Title: 鉛入り積層ゴムの熱・力学的連成挙動を考慮した免震建築物の応答評価に関する研究
Other Titles: Earthquake Response Evaluation of Seismically Isolated Buildings Considering Thermal-Mechanical Coupled Behavior of Lead Rubber Bearings
Authors: 近藤, 明洋 Browse this author
Issue Date: 25-Sep-2023
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 南海トラフ地震や相模トラフ地震に代表されるような海溝型地震では震源域近傍や震源 から遠く離れた大都市圏でいわゆる長周期地震動の発生が懸念されている.この地震動は 周期4~6秒程度の成分に通常設計で相当されているレベルより大きな振幅を有し,継続時 間が長いことが示されており,大振幅・長周期・長時間地震動であると言える. 構造物を長周期化して耐震安全性を確保しようとする免震建築物の建物応答は想定され る大振幅・長周期・長時間地震動の下では免震部材の繰返し変形下での特性変化により設計で想定しているより大きくなることが懸念されている. 免震建築物に主要な免震部材として採用されている鉛入り積層ゴムは,水平剛性要素と 減衰要素を有する機能複合型であり,地震による入力エネルギを鉛プラグの塑性変形による履歴減衰により吸収している.吸収された地震エネルギは鉛プラグ材の熱エネルギに変換されるが,鉛プラグ部分での発熱量がプラグ周囲への逸散量より大きいと,鉛プラグの温度が上昇することになる.鉛は金属の中でも比較的融点が低いため,鉛プラグの温度上昇によって鉛の降伏応力が低下することが予測される.巨大地震の際に予測される大振幅・長周期・長時間地震動においては、周期が長く,大振幅の揺れが長時間にわたって継続するため,鉛プラグの温度が地震継続時間中に上昇し,鉛プラグ積層ゴムとしての減衰性能が低下することになる.これらの現象が生じると,免震建築物の最大応答変位が増加して,擁壁への衝突や積層ゴムの限界変形を超える可能性があることが指摘されている. 本研究では、免震建築物に用いられている鉛入り積層ゴムを対象として,多数回繰返し変 形を受けた場合の力学的特性変化現象の把握と鉛入り積層ゴムの力学的特性変化を考慮し た免震建築物の応答評価法を構築し,その応答評価法を設計段階で用いることを目的とし ている. 第1章「はじめに」では,まず本研究の背景と目的について述べた.鉛入り積層ゴムの熱的挙動と力学的挙動が相互に影響を与え合う連成作用を「鉛入り積層ゴムの熱・力学連成挙 動」としてとらえ,その挙動を把握することの必要性を述べた. 次に鉛入り積層ゴムの熱・力学連成挙動に関する既往の研究を概観し,主な成果を整理す るとともに,既往の研究では明らかにされていない項目について述べた. 第2章「動的加振実験による熱・力学的連成挙動の解明」では,鉛入り積層ゴムに繰返し 変形を与えた加振実験について述べた.加振実験では,鉛入り積層ゴムの実大サイズを装置 径1000mm(φ1000)として,1/2(φ500),1/4(φ255)の縮小試験体での実験を実施し, 装置サイズの違う積層ゴムについて熱・力学的連成挙動の違いについて考察した.本挙動に は装置サイズの影響があり,相似則が成立することを把握した.また,鉛入り積層ゴムの降伏耐力が同一で,鉛プラグの配置が異なる単一プラグの場合と分散プラグの場合について,特性変化の違いを把握し,特性変化には鉛プラグの温度上昇に寄与する熱エネルギの影響があることを明らかにした.更に,大型振動台を用いて水平2方向加振実験を実施し,鉛プラグ入り積層ゴムの繰返し変形下での特性変化は2方向同時加振により入力エネルギ(吸収エネルギ)は大きくなるものの,1方向加振時の特性変化と同様であることを確認した. 第3章「熱・力学的連成挙動の解析的検討」では,第2章で行った加振実験結果をシミュ レートする解析手法を提案した.解析手法は鉛入り積層ゴムの熱伝導解析と特性評価を並 行して実施する手法である.熱伝導解析は第4章の検討で用いる地震応答解析法に適用す ることを見据えて,有限要素法(FEM)解析ではなく差分法を用いた手法とした.本手法による解析はいわゆるマクロモデルによる解析と位置付けられるので,解析モデルの要素分割などの解析手法の妥当性は非定常熱伝導問題の解析解により検証した.提案した解析手法により第2章の実験結果のうち,装置サイズや正弦波加振,地震応答波加振などの加振条件の違い,鉛プラグが単一プラグか分散プラグかの鉛プラグの配置の違い,また加振方向が1方向か2方向かなどの種々の解析対象条件,加振条件による実験結果をシミュレートできることを示した. 第4章「熱・力学的連成挙動を考慮した免震建築物の地震応答評価法」では,第3章で示 した実験結果をシミュレートできる解析手法を免震建築物の地震応答評価法である時刻歴 応答解析に拡張し,設計的観点から免震建築物における鉛プラグ入り積層ゴムの熱・力学連 成挙動の影響を評価できる解析手法を示した.解析手法は,熱伝導解析と時刻歴地震応答解析とを併用する詳細応答評価法,通常応答解析を実施し,その結果から鉛入り積層ゴムの特性変化を考慮し、あらかじめ特性を変化させたパラメータを用いて応答評価を実施する簡 易応答評価法,詳細応答評価法のように熱伝導解析は実施しないものの,鉛入り積層ゴムの 特性変化を積層ゴムサイズや鉛プラグの温度上昇に寄与するエネルギ割合を考慮した特性 変化式を定義し,その特性を用いて時刻歴地震応答解析で時々刻々特性を変化させて応答 評価する手法である準詳細応答評価法を提案した. 詳細応答評価法と簡易応答評価法による応答結果を比較・考察し,免震層最大応答変位について簡易応答評価法による評価結果が必ずしも安全側とはならないケースがあること, また過大に安全側に評価するケースがあることを示した.これらは簡易応答評価法では免震層特性の経時変化を考慮できず,入力地震動の経時的な卓越周期の影響を考慮できない ため生じる違いであることを明らかにした. また,詳細応答評価法と準詳細応答評価法による結果は鉛入り積層ゴムの特性変化が適 切に設定されればほぼ同じ結果が得られることを示した. 更に,詳細応答評価法による応答評価結果を考察する中で,検討対象とする入力地震動の 特性検討評価手法から,ランニング応答スペクトル応答評価法を提案し,免震層の応答最大 変位について詳細応答評価法と同じ結果が得られることを示した. 第5章「結論」では,本論文の成果をまとめ,対象とした問題に対して今後の展望について述べた.
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第15625号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 工学
Examination Committee Members: (主査) 教授 菊地 優, 教授 岡崎 太一郎, 准教授 高井 伸雄
Degree Affiliation: 工学院(建築都市空間デザイン専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/90863
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 工学院(Graduate School of Engineering)
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