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一人称研究から考察するNFT市場における新たな芸術的価値
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Title: | 一人称研究から考察するNFT市場における新たな芸術的価値 |
Authors: | 布川, 雅子 Browse this author |
Keywords: | NFT アート | 芸術的価値 | 芸術の権威 | アートシーンの変化 |
Issue Date: | 25-Sep-2023 |
Publisher: | Hokkaido University |
Abstract: | ブロックチェーンの⾰新的な技術を⽤いた NFT アートの登場は,アートシーンの構造を変え,芸術作品の価値づけのプロセスを変えた.2021 年から2022 年にかけて起きた NFT アート市場の急成⻑は,アートシーンにとって衝撃だった.かつての中央集権的な構造のアートシーンでは,⼀部の権威的な⽴場にある組織や構成員たちが芸術に対して価値を加えていた.しかし,暗号資産を⽤いた相対での取引は,ブロックチェーン上に NFT マーケットプレイスでの取引や所有のデータが記録され,誰にでも閲覧できる仕組みで,アート作品を売買出来るプラットフォームが⽤意されている.市場の参加者も富裕層だけではなく,⼀般のアートファンである点も特徴的だ.従来はギャラリストや美術評論家が芸術の価値を形成し,アートディーラーの仲介によって芸術作品は取引されてきた.だが,芸術作品の真正性や唯⼀無⼆性が確保され,透明性の⾼い環境が整えられたことで取引のスピードは格段に早くなり,芸術は⾝近なものとなった.こうした従来のアートシーンと NFT アート市場とを⽐較検証し,アート作品に対する価値の付与はどのように変化するのか,⼀⼈称研究の中で得た結果を分析し,新たな仮定を⽣成する.⽂化や社会の構造はこの半世紀で激変しており,その背景には著しい技術の進歩があげられる.⼤規模なメインフレームの時代からパーソナルコンピューターの時代を経て,インターネットを誰もが使いこなす時代へと移⾏した.デバイスの⼩型化やクラウドの利⽤が促進され,近年では AI が提供するデータの流通や利⽤と分散型システムが標準化され,暗号資産をはじめとするブロックチェーン技術に関連する市場が拡⼤した.ブロックチェーン上のデジタル資産の⼀つである NFT は,個々のアイテムや作品に対して独⾃の識別情報を持ち,真正性の確認ができる.これまで真贋を証明することが難しかったデジタルアートの価値は担保され,取引量は急増した.権威が創出する芸術的価値ではなく,⼤衆が芸術を楽しむための「遊戯空間」の誕⽣によって,これまでと異なる芸術の価値が,われわれの⾝近なところで誕⽣しつつある.コミュニケーション⼿段や創作表現は変化し,そのことで互酬性のあり⽅や倫理観にも影響があるはずだ.歴史の中では何度も既存の価値観を壊すカウンターカルチャーが⽣まれ,アートシーンは新陳代謝が⾏われてきた.しかし,これまで追及されてきた「芸術のオリジン」とその価値について,今⼀度考察する時期に来ているのではないか.芸術の持つ社会的な意義は構造の中で変化し,個々の芸術に対する意識も変わってきている.NFT アートのプラットフォームの特徴は,アートシーンだけでなくアート作品にも反映され,新たな価値観が誕⽣するだろう.それは劇的な変化というよりは,IT 技術の進化とともに⽣活者の中に⾃然な形で浸透し,楽しみながらコミュニティの中で育まれる価値観なのかもしれない.この静かに進⾏する変化の影響は,いずれアートシーンの構造と権威のあり⽅に対し,⼤きな影響を与えるに違いない. |
Conffering University: | 北海道大学 |
Degree Report Number: | 甲第15618号 |
Degree Level: | 博士 |
Degree Discipline: | 国際広報メディア |
Examination Committee Members: | (主査) 准教授 藤野 陽平, 教授 西村 龍一, 准教授 田邉 鉄, 准教授 上田 裕文 |
Degree Affiliation: | 国際広報メディア・観光学院(国際広報メディア・観光学専攻) |
Type: | theses (doctoral) |
URI: | http://hdl.handle.net/2115/90902 |
Appears in Collections: | 課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 国際広報メディア・観光学院(Graduate School of International Media, Communication and Tourism Studies) 学位論文 (Theses) > 博士 (国際広報メディア)
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