HUSCAP logo Hokkaido Univ. logo

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers >
Theses >
博士 (工学) >

媒質境界および共振構造における局在現象による固体音響波の制御

Files in This Item:
Hayato_Takeda.pdf32.48 MBPDFView/Open
Please use this identifier to cite or link to this item:https://doi.org/10.14943/doctoral.k15837
Related Items in HUSCAP:

Title: 媒質境界および共振構造における局在現象による固体音響波の制御
Other Titles: Control of elastic waves using localization phenomena on media boundaries and resonant structures
Authors: 武田, 颯 Browse this author
Issue Date: 25-Mar-2024
Publisher: Hokkaido University
Abstract: 固体媒質中には、圧縮応力と剪断応力が作用する。故に歪みや応力を伝播する固体中の音響波に は、様々な偏向状態の振動が許されている。このような空気中の音響波や電磁波には無い振動モード の選択性は、固体音響波の重要な特徴である。適切なモードを選択することにより様々な応用に柔軟 に対応できる。音響波の制御や利活用は日常生活に関わる幅広い領域において進んでおり、環境音の 抑制や建造物の制振、超音波による医療検査や物体の非破壊検査がこれに当たる。また最近では通信 技術や通信機器の小型化、高集積化への寄与も認められる。これは電磁波に対して音響波は等周波数 における波長が非常に小さく、固体中を伝播する際にジュール熱を伴わないことに起因する。以上の ような応用においては、制御の対象となる特定周波数の音響波に対して媒質の応答の最大化が要求さ れる。特に音響波の導波における減衰の低減、音響波の遮蔽における遮蔽可能な周波数幅の拡大は、 音響波制御の研究領域に置いて長らく議論されてきた課題である。本論文ではこれらの課題への提案 として、媒質境界および共振器構造への音響波の局在現象を利用した二種の研究について述べる。 第一の研究は媒質境界に沿った音響波の局在現象であるトポロジカル境界モードに着目し、六方格 子状の力学模型における曲げ波の特異な伝播を実証するものである。トポロジー物理学は、特にグラ フェンなどの 2 次元構造をはじめとする低次元材料において急速に発展している凝縮物理学の分野で ある。近年になってトポロジーの概念は古典物理系にも適用され、フォノニック結晶などの人工構造 における波の伝播について研究が進められている。特にトポロジーが異なる媒質を接合した境界面に 生じるトポロジカル境界モードは、その頑強性と低エネルギー損失から古典波動場において注目され る局在現象である。数多のトポロジカル波動現象のうちバレーホール (Valley Hall, VH) 系はフォノ ニック結晶との親和性が高く、単位胞の空間反転 (P) 対称性を破ることで実現可能であることが知ら れている。kHz から GHz まで広く VH フォノニック結晶が検討されているが、高周波かつ微小振動 であることが多く、実験による安定的な測定方法の要求が障害となっている。10 Hz 程度の低周波数 域については磁気で結合されたスピナーからなるメカニカルな VH 系の研究も報告されているが、ス ピナーは六方格子点上に回転軸を固定されており、カイラルフォノンなどの高自由度の運動を再現す ることが困難である。一般に音響波は構造スケールの拡大縮小によって応答周波数の調整が可能であ り、低周波数における構造探索もまた高周波数域のための知見を与えうる。よって本研究では、六方 格子状に加工されたステンレス薄板、プラスチック製中空棒、真鍮円盤からなる力学模型を構築し、 低周波の曲げ振動について VH フォノニック系に類似する境界モードの実証を行った。模型の着想は 一次元波動現象の演示に用いられる Shive ウェーブマシンに得ており、提案模型は観測が容易な振幅 と隣接格子点間の相互作用の大きさを確保した二次元版のウェーブマシンである。トポロジカル境界 モードの低周波伝播は実験的に実証され、その挙動は数値シミュレーションにより分析された。本成 果はトポロジカルフォノニクスに基づく高度な波動伝播の知見を与えるに限らず、フォトニクスや凝 縮物理学を含む多様な系における波動場の制御に貢献しうる。 第二に共振器構造への音響波の局在現象に着目し、従来構造より広い周波数幅の音響波を遮蔽する テーパー状の矩形断面梁を提案する。梁などの棒状媒質における音響波は、圧縮、面内せん断、屈 曲、およびねじれの 4 つの偏向状態を有する。一般にはこれらが同時に伝播することで棒状媒質が振 動するため、棒状媒質における音響波の遮蔽にはこれら 4 モードの伝播の同時抑制が求められる。そ の手段として、制御対象の音響波長より小さな共振器構造の周期的配列からなる音響メタマテリアル がある。音響メタマテリアルは波の遮蔽をはじめ、負の屈折、クローキング、超レンズ効果など特異 な音響波現象を示す人工結晶として様々な構造が研究されてきた。棒状媒質については一部のモード を抑制する、もしくは複雑な構造の複合材料によって 4 モード制御を実現するといった提案が主で あったが、その後当研究室において矩形断面のアルミニウム梁、アクリル円柱棒において単一材料で かつ 4 モードの同時遮蔽する完全バンドギャップの形成が実証された。しかしその周波数幅は、完全 バンドギャップの平均周波数の約一割程度に留まった。また完全バンドギャップはフォノニック結晶 からなる棒状媒質でも認められるが、広帯域の遮断特性である一方で、同周波数で比較すれば音響メ タマテリアルの小型の制振機構に比較すれば構造寸法は増大してしまう。そこで本研究では音響メタ マテリアル梁をテーパー状に変形し、単位構造の共振周波数を一定の割合で変化させる構造を開発し た。テーパー化することで各共振器構造が与える遮蔽周波数帯域を微小に変調し、その重ね合わせの 結果として遮蔽周波数幅の拡大を図った。共振周波数が近接した複数の共振器からなる音響メタマテ リアルはレインボーメタマテリアルとも呼ばれ、本構造は任意のメタマテリアル構造をテーパー状に 変形することで実現された新たな形態のレインボーメタマテリアルである。この構造により、非テー パー時に比較して平均で約 3 倍広い帯域において音響波の遮断が実現されることが実験と数値シミュ レーションで示された。本成果は加工容易性と広帯域の振動遮蔽を両立する多様な構造物の開発に貢 献しうる。 本論文の内容は以下の通りである。まず各研究の関連分野の研究背景、先行研究について紹介す る。次に一つ目の研究である「二次元六角格子ウェーブマシン上の曲げ波におけるトポロジカル境界 モード」について、数値計算と実験の結果について述べる。続いて二つ目の研究である「kHz 帯で完 全バンドギャップを有するテーパー状の音響レインボーメタマテリアル梁」について、構造の詳細と 併せて数値計算と実験の結果を示す。最後に、各成果を踏まえた統括を述べる。
Conffering University: 北海道大学
Degree Report Number: 甲第15837号
Degree Level: 博士
Degree Discipline: 工学
Examination Committee Members: (主査) 教授 松田 理, 教授 市村 晃一, 准教授 小布施 秀明
Degree Affiliation: 工学院(応用物理学専攻)
Type: theses (doctoral)
URI: http://hdl.handle.net/2115/91935
Appears in Collections:課程博士 (Doctorate by way of Advanced Course) > 工学院(Graduate School of Engineering)
学位論文 (Theses) > 博士 (工学)

Export metadata:

OAI-PMH ( junii2 , jpcoar_1.0 )

MathJax is now OFF:


 

 - Hokkaido University